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同じ記憶を持つ彼女が二人いる世界で、僕は本物を選べない  作者: Laica
第1章 彼女が来た春

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第4話 昼休み

挿絵(By みてみん)

昼休みのチャイムが鳴ると、

教室の空気が一気にゆるんだ。


机を寄せる音。

弁当のふたが開く音。

あちこちで笑い声が上がる。


僕もカバンからパンを取り出した。


そのとき。


「ねえ」


隣から声がする。


顔を上げると、彼女がこちらを見ていた。


「いつも、ここで食べてるの?」


「うん、だいたい」


彼女は少しだけ安心したようにうなずく。


「よかった」


「?」


「知らない人ばかりだと、少し困るから」


“困る”。


その言い方が、わずかに引っかかる。


「一緒に食べてもいい?」


「いいよ」


彼女は弁当箱を取り出す。


黒くて、無駄のない形。


ふたを開けると、

中はきれいに均等に仕切られていた。


「すごいな、それ」


「そう?」


「なんか、無駄がない」


彼女は少しだけ考える。


「そういうものだから」


答えになっているようで、

なっていない。


僕はパンをかじる。


そのとき。


彼女の視線が止まる。


手元。


パン。


動かない。


観察している。


まるで、


“まだ体験していないもの”を、

外側から理解しようとしているみたいに。


「……なに?」


思わず聞く。


彼女は一拍おいてから言う。


「それ、どんな味?」


「え?」


「甘い?」


「まあ……甘いけど」


彼女は小さくうなずく。


そして、


ほんの少しだけ身を乗り出す。


「匂いも、甘いね」


確認するような言い方だった。


知っているわけじゃない。


でも、


知らないままでもない。


その中間みたいな反応。


「……」


彼女はすぐに笑う。


「今度、食べてみようかな」


自然な声。


だからこそ、


さっきの違和感だけが残る。


そのとき。


彼女の箸が、止まる。


ほんの一瞬。


視線が動く。


教室のドアの方へ。


誰も入ってきていない。


音もない。


それでも、


彼女は見ている。


“まだ起きていない何か”を確認するみたいに。


――数秒後。


ガラ、とドアが開く。


遅れて現実が追いつく。


僕は何も言えない。


彼女はすでに視線を戻していた。


何もなかったみたいに。


でも、


順番だけが、おかしい。


違和感が、


ひとつでは済まなくなっていた。


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