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同じ記憶を持つ彼女が二人いる世界で、僕は本物を選べない〜死んだ彼女を再現したら、本物が帰ってきた〜  作者: 雷火
第2章 普通の時間

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第43話 帰り道

放課後。


冬の空は赤く染まっていた。


並んで歩く。


いつも通りの帰り道。


「寒いね」


僕が言う。


彼女は空を見る。


「気温は三度です」


「そうじゃなくて」


少し間。


「……寒いです」


僕は笑う。


そのやり取りが。


少し楽しかった。


コンビニに寄る。


温かい空気。


光。


生活の匂い。


彼女は静かに観察している。


僕は飲み物を二つ買う。


外に出る。


缶を渡す。


彼女は受け取る。


「温度、約52度」


「だからそれやめて」


彼女は少し考える。


「……あったかい」


ぎこちない。


でも。


ちゃんと“人間寄り”になっている。


しばらく歩く。


夕焼けの中。


そのとき。


違和感。


歩幅が少しずれている。


「どうした」


「問題ありません」


でも。


明らかに遅い。


僕は止まる。


「残量」


彼女が少し驚く。


「……12%です」


やっぱり。


僕は即答する。


「急ごう」


歩き出す。


少し速く。


彼女も合わせる。


でも。


完全には隠せない。


そのとき。


彼女が言った。


「質問があります」


「なに」


「なぜ」


少し間。


「私に飲み物を渡したのですか」


僕は答える。


「寒いから」


「私は寒くありません」


「知ってる」


少しだけ笑う。


「でも一緒に飲みたかった」


彼女は止まる。


動かない。


処理している。


夕日が横顔を照らす。


そして。


「……理解」


小さく言う。


「あなたは」


「私と同じ行動を共有したい」


僕は肩をすくめる。


「そんな感じ」


彼女は次の言葉を選ぶように沈黙する。


そして。


「それは」


ゆっくりと。


「重要ですか」


僕は少しだけ考える。


そして答えた。


「うん」


「結構」


彼女は頷く。


「了解」


再び歩き出す。


住宅街に入る。


見慣れた道。


その途中で。


彼女がもう一度言った。


「確認します」


「なに」


「私は」


少し間。


「あなたにとって必要ですか」


その質問は。


まっすぐすぎた。


僕は一瞬、言葉に詰まる。


でも。


答えは出ていた。


「……必要だよ」


彼女はすぐに頷いた。


「了解」


迷いがなかった。


その反応を見て。


僕の胸の奥で。


何かが確定した。


——彼女は、僕の言葉で成立している。


そして同時に。


——僕も、彼女を必要としている。


冬の空の下。


二人で歩く。


どこにでもある帰り道。


でも。


この関係はきっと。


普通じゃない。


静かに。


確実に。


戻れないところまで


進み始めていた。


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