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彼女 ―桜は光の粒のように― 〜同じ記憶を持つ彼女が、二人いる世界で〜  作者: 雷火
第2章 普通の時間

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第37話 目覚めの日常

朝。


研究室は静かだった。


機械音も、今日はやけに遠い。


「おはよう」


僕が声をかけると、彼女はすぐに反応する。


「おはようございます」


間がない。


正確すぎる。


それでも。


その“正しさ”が、心地いい。


「今日は日常の学習をやる」


僕が言うと、彼女は頷く。


「了解しました」


迷いがない。


否定もない。


ただ、受け入れるだけ。


――楽だ。


あまりにも。


「手、出して」


彼女は従う。


僕はその手に触れる。


柔らかい。


温度もある。


「……どう?」


無意識に聞いていた。


彼女は一瞬だけ停止する。


「接触を確認」


「問題ありません」


違う。


そうじゃない。


でも。


「そっか」


それでいいと思ってしまう。


桜井が後ろから言う。


「順調すぎるね」


小田切も続く。


「異常だな」


僕は振り返る。


「何がですか」


「拒否がない」


短い言葉。


刺さる。


「普通はズレが出る」


「嫌悪、躊躇、選択」


「それがない」


僕は彼女を見る。


静かに立っている。


こちらを見ている。


「問題ないと思いますけど」


即答だった。


小田切が少しだけ眉を動かす。


「そう思うのは危険だ」


桜井が小さく言う。


「“合わせすぎてる”」


その言葉。


一瞬だけ、引っかかる。


でも。


彼女が言う。


「あなたの指示に従います」


それで。


全部、どうでもよくなった。


「……それでいいよ」


気づかないふりをした。


この“楽さ”が。


何かを削っていることに。


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