表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
彼女 ―桜は光の粒のように― 〜同じ記憶を持つ彼女が、二人いる世界で〜  作者: 雷火
第2章 普通の時間

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

36/51

第36話 静かな完成式

部屋は静かだった。


祝福の空気ではない。


確認の場。


責任の場。


そんな空気。


中央に立つ、彼女。


白い布がかけられている。


まるで。


“存在を隠している”ように。


「始めよう」


低い声。


ドアが開く。


彼女の父親だった。


空気が引き締まる。


「これが例のものか」


“もの”。


その言葉が、わずかに引っかかる。


でも。


何も言えない。


彼は近づく。


無駄のない動き。


「責任は私が持つ」


短く言う。


その意味は重い。


許可。


そして、支配。


スイッチに手をかける。


押す。


布がわずかに揺れる。


そして。


目が開く。


「……おはようございます」


静かな声。


完璧な発声。


彼は、ほんの一瞬だけ驚いた。


「……ここまでか」


短く呟く。


そして、僕を見る。


「君に任せる」


その一言。


重い。


逃げられない。


「観察しろ」


「異常があれば報告しろ」


命令。


完全に。


でも。


僕は頷いた。


「はい」


それしかなかった。


布が外される。


そこにいるのは。


“彼女”だった。


誰が見ても。


そう見える。


彼女は、僕を見る。


そして言う。


「これから、よろしくお願いします」


形式的な言葉。


でも。


違う。


僕には分かる。


これは。


“僕に向けた言葉”だ。


そう思ってしまう。


もう、止められない。


小田切が小さく言う。


「監視対象だ」


桜井は黙っている。


誰も祝わない。


誰も喜ばない。


それでも。


僕だけは違った。


「……よろしく」


その一言で。


すべてが決まった。


これはもう、研究じゃない。


関係だ。


そしてその関係は。


明らかに、歪んでいた。


本日分、ここまで読んでいただきありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ