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彼女 ―桜は光の粒のように― 〜同じ記憶を持つ彼女が、二人いる世界で〜  作者: 雷火
第2章 普通の時間

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第30話 最初の“反応”

骨格に人工筋肉が取り付けられていく。


細い繊維が、関節に絡みつくように配置される。


「これが動力」


女性研究員が説明する。


「人間の筋肉と同じ動きするよ」


男性研究員が補足する。


「ただし、感情はない」


その一言が、妙に強く残った。


やがて。


制御ユニットが接続される。


モニターに信号が流れる。


「テスト起動」


女性研究員が言う。


僕の心臓が速くなる。


電子音。


次の瞬間。


指先が、わずかに動いた。


「……動いた」


思わず声が出る。


腕が動く。


関節が回る。


ぎこちない。


でも確実に、“反応している”。


女性研究員が笑う。


「いいね、ちゃんと繋がってる」


男性研究員は冷静に言う。


「入力に対する出力だ」


「意思ではない」


僕は、ゆっくり近づく。


手を伸ばす。


骨格の指に触れる。


わずかな抵抗。


柔らかさ。


温度はない。


でも。


「……近い」


思わず呟く。


そのとき。


モニターに新しいログが表示される。


外部入力:接触

反応:把持動作


次の瞬間。


骨格の指が、僕の指を軽く握った。


息が止まる。


「……おい」


男性研究員の声が低くなる。


「今のは設定にない」


女性研究員がモニターを見る。


「自己補完で動いた?」


僕はその手を見つめる。


離そうと思えば、離せる。


でも。


離さなかった。


「ねえ」


女性研究員が静かに言う。


「それ、もうただの機械じゃないかもね」


男性研究員は即座に否定する。


「違う」


「ただの誤作動だ」


でも。


僕は違うと思った。


この感覚。


このタイミング。


「……覚えてるのかもしれない」


無意識に言っていた。


二人がこちらを見る。


僕は、骨格の手を握ったまま言う。


「触れ方を」


静寂。


その沈黙の中で。


何かが、確実に変わった。


それは。


“再現”ではなく。


“関係”の始まりだった。


本日分、ここまで読んでいただきありがとうございます。

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