第30話 最初の“反応”
骨格に人工筋肉が取り付けられていく。
細い繊維が関節に沿って走り、
固定されていく。
「これが動力」
女性研究員が言う。
「人間の筋肉とほぼ同じ動きする」
男性研究員が続ける。
「ただし、感情も意思もない」
その言葉だけが残る。
やがて制御ユニットが接続される。
モニターに信号が流れる。
「テスト起動」
電子音。
次の瞬間。
指先が、わずかに震えた。
「……動いた」
腕が持ち上がる。
関節が回る。
ぎこちない。
遅い。
でも、
確かに反応している。
「接続は問題ないね」
女性研究員。
「入力に対する出力だ」
男性研究員。
僕は近づく。
ゆっくり手を伸ばす。
骨格の指に触れる。
冷たい。
硬い。
でも、
ほんのわずかに“返ってくる感触”がある。
そのとき。
モニターにログが出る。
外部入力:接触
反応:保持補助
次の瞬間。
指が、少しだけ動く。
握る、というほどじゃない。
でも、
離れない程度に引っかかる。
「……」
息を止める。
偶然かもしれない。
プログラムかもしれない。
でも。
タイミングが、合いすぎている。
男性研究員が言う。
「反射だ」
「接触に対する保持補助」
女性研究員は画面を見る。
「でも少し早いね」
僕はそのまま手を置く。
離せる。
でも、離さない。
骨格の指も、
完全には動かない。
中途半端なまま、
そこにある。
「……近い」
思わず出る。
完成していない。
でも、
遠くもない。
女性研究員が静かに言う。
「こういうところからだよ」
男性研究員は否定しない。
ただ、短く言う。
「意味を乗せるな」
僕は答えない。
ただ、その手を見る。
動きは不完全。
意図もない。
それでも。
「……覚えてるみたいだ」
小さく呟く。
誰にでもなく。
証明はできない。
でも、
そう感じてしまった。
沈黙。
機械音だけが続く。
その中で、
僕は初めて思う。
これは再現じゃない。
まだ、
始まったばかりだと。
本日分、ここまで読んでいただきありがとうございます。




