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彼女 ―桜は光の粒のように― 〜同じ記憶を持つ彼女が、二人いる世界で〜  作者: 雷火
第2章 普通の時間

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第29話 最初の骨格

低い機械音が研究室に響く。


大型3Dプリンターが動いている。


白い素材が、少しずつ形になる。


「骨格出力、開始」


女性研究員が言う。


モニターには人体構造図。


その横に、最適化されたフレーム設計。


男性研究員が指摘する。


「人間の骨をそのまま真似るな」


「効率が悪い」


女性研究員が笑う。


「でも“人間らしさ”は残したいでしょ?」


僕は聞く。


「違いって、そんなに重要ですか」


男性研究員は即答した。


「重要だ」


少し間を置く。


「違いがあるから、人間じゃないと分かる」


その言葉は、妙に引っかかった。


プリンターの中で、形が出来ていく。


脚。


関節。


指。


“身体”が作られていく。


僕はそれを見ながら思う。


――これが、彼女の“器”になる。


女性研究員がふと聞く。


「ねえ」


「もし完全に同じ見た目になったらさ」


僕を見る。


「それ、本物って言える?」


答えられなかった。


でも。


「僕がそう思えば、本物です」


言い切った。


男性研究員が小さく息を吐く。


「危険だな」


「それは認識の問題じゃない」


「事実の問題だ」


僕はプリンターを見る。


少しずつ出来上がる骨格。


「じゃあ聞きますけど」


自然に言葉が出た。


「人間だって、記憶でできてるんじゃないんですか?」


空気が止まる。


「それを再現できたら」


「何が違うんですか」


女性研究員は黙って聞いている。


男性研究員は、少しだけ目を細めた。


「……魂だ」


短く言う。


「それは再現できない」


僕は即答した。


「証明できますか?」


沈黙。


機械音だけが響く。


数時間後。


プリンターが止まる。


カバーが開く。


そこにあるのは。


白い骨格。


人間と同じ形。


でも。


どこか違う。


「これが器だ」


男性研究員が言う。


「中身が入れば、別の存在になる」


僕はそれを見つめる。


そして思う。


――それでもいい。


彼女に、近づけるなら。


本日分、ここまで読んでいただきありがとうございます。

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