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同じ記憶を持つ彼女が二人いる世界で、僕は本物を選べない  作者: Laica
第3章 君をもう一度、作る

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第28話 最初のデータ

挿絵(By みてみん)

研究室の奥。


白い光の中で、

モニターだけが色を持っていた。


「これが例のデータ?」


女性研究員がチップを指先で挟む。


僕は頷く。


「……彼女の、全部です」


少しだけ間。


男性研究員が口を開く。


「“全部”かどうかは、ここで判断する」


否定ではない。


確認だった。


女性研究員が端末に差し込む。


電子音。


読み込みが始まる。


波形。


ログ。


数値。


画面が埋まっていく。


「……重いね」


女性が言う。


「記録の量じゃない」


スクロールが止まらない。


「これは“積み重ね”だ」


男性研究員が続ける。


「時間ごと保存してる」


僕は画面を見つめる。


「消したくなかったんだと思います」


誰にともなく言う。


女性研究員が小さく頷く。


「うん」


短い肯定。


やがて画面が切り替わる。


三次元モデル生成。


点が集まり、

線になり、

形になる。


――彼女が現れる。


息が止まる。


同じだ。


でも、


まだ“空”だ。


「ここまでが外側」


男性研究員。


「ここから先が問題だ」


女性研究員が椅子を引く。


操作画面を開く。


「中身、あるね」


淡々とした声。


「行動ログ、会話履歴、意思決定」


スクリーンに分岐が広がる。


無数の選択。


無数の結果。


「かなり再現できる」


そう言ってから、


少しだけ僕を見る。


「でもね」


一拍。


「“同じ人”にはならない」


否定ではない。


前提の提示だった。


僕はうなずく。


「わかってます」


男性研究員が言う。


「それでもやるのか」


「はい」


間を置かない。


「もう一度、会いたいんです」


沈黙。


でも、


さっきまでのものと違う。


拒否ではない。


考えている沈黙。


女性研究員が口を開く。


「いいよ」


軽く言う。


でも、


その目は真剣だった。


「ただし条件」


画面を切り替える。


表示されるのは一行。


――段階生成プロトコル


「いきなり“人格”は作らない」


「まずは動き」


「次に反応」


「最後に選択」


指で順番をなぞる。


「一緒に積み上げる」


男性研究員が続ける。


「再現じゃない」


「関係の再構築だ」


その言葉で、


少しだけ息ができるようになる。


女性研究員が笑う。


「焦ると壊れるからね」


「人も、機械も」


僕は画面を見る。


そこにいる“彼女”。


まだ何もしていない。


でも、


消えてもいない。


「……お願いします」


自然に出た言葉だった。


女性研究員が頷く。


「ようこそ」


小さく言う。


「ここは、“やり直す場所”だから」


画面の隅に、


新しいフォルダが生成される。


ANDROID PROJECT


その下に、


もう一つ。


PHASE 01


僕はそれを見て思う。


これは再現じゃない。


――もう一度、始めるんだ。


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