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彼女 ―桜は光の粒のように― 〜同じ記憶を持つ彼女が、二人いる世界で〜  作者: 雷火
第2章 普通の時間

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第28話 最初のデータ

研究室の奥。


無機質な光の中で、モニターだけがやけに鮮やかに見えた。


「これが例のデータ?」


女性研究員がチップを手に取り、軽く振る。


僕は頷く。


「……彼女の、全部です」


その言葉に、男性研究員が反応した。


「“全部”なんて言葉を軽く使うな」


低い声だった。


「人間はデータじゃない」


無視するわけじゃない。


でも、止まれなかった。


「読み込みます」


女性研究員が端末に差し込む。


静かな電子音。


画面に波形が流れ始める。


音声。

映像。

身体データ。

行動ログ。


異常な情報量だった。


「……ここまで残すか普通」


女性研究員が小さく呟く。


やがて、画面が切り替わる。


三次元モデル生成。


点が集まり、線になる。


線が面になり、形になる。


ゆっくりと。


“彼女”が現れる。


息が止まる。


肩のライン。


髪の流れ。


目の形。


すべて、知っている。


「再現精度は高いな」


男性研究員が言う。


「だがこれは外見だ。中身じゃない」


女性研究員が椅子に座り直す。


「中身もあるでしょ、たぶん」


モニターを操作する。


行動パターン解析。


会話ログ。


意思決定履歴。


「これ、かなりやばいね」


少し笑いながら言う。


「ほぼ人格モデル組めるよ」


男性研究員が鋭く言う。


「やるな」


一瞬、空気が変わる。


「それは“再現”じゃない。“生成”だ」


「別の存在を作ることになる」


僕は画面を見たまま言った。


「それでもいいです」


二人の視線が僕に集まる。


「同じじゃなくてもいい」


「近ければいい」


自分でも分かっている。


それが、どこか歪んでいることくらい。


でも。


「もう一度、会いたいんです」


沈黙。


女性研究員が小さく息を吐く。


「……いいね、その感じ」


軽く笑う。


「倫理的にはアウトだけど」


男性研究員は目を閉じる。


そして、短く言った。


「記録だけにしろ」


「人格生成には踏み込むな」


僕は答えなかった。


ただ、画面の中の彼女を見ていた。


その横に、表示される新しいフォルダ名。


ANDROID PROJECT


その文字を見たとき。


もう、戻れないと分かった。


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