第20話 影は再び
放課後。
僕たちは、いつもの帰り道を歩いていた。
昨日と同じ道。
でも、僕の胸の奥には小さなざわめきが残っている。
「今日は少し遅くなるかも」
彼女が言った。
何気ない言葉なのに、僕は反射的に振り返る。
――やっぱり。
少し離れた歩道に、
あの黒塗りの車が静かに停まっていた。
窓にはスーツ姿の男二人。
運転席の男と後部座席の男。
じっと僕たちを見つめている。
彼女は気づいていないのか、
何事もないように歩き続ける。
僕は心臓が早鐘を打つのを感じた。
思わず彼女の肩を軽く引く。
「…危ないかも」
彼女はちらりと僕を見る。
小さな笑顔を作り、軽く首を横に振る。
「大丈夫。気にしないで」
でも、その瞳の奥に、
昨日の影を思い出すような微かな揺らぎがあった。
僕は思わず息を飲む。
守らなきゃ、という気持ちが自然に湧き上がった。
車が少し近づく。
エンジン音は聞こえない。
でも、その存在感が、日常の景色を少しだけ変えてしまう。
僕は心の中で小さく誓った。
――この子を、絶対に守る。
彼女は、何も知らず笑いながら歩く。
それだけで、僕の世界は少し輝きを取り戻す。
それでも、
影は確かに存在していた。
黒塗りの車、スーツの男、
そして知らない未来の気配。
――だけど、
僕はこの日常を、守る。
本日分、ここまで読んでいただきありがとうございます。




