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同じ記憶を持つ彼女が二人いる世界で、僕は本物を選べない  作者: 雷火
第5章 さよならの最適解

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115/122

第115話 同じ席

朝。


テーブルに三つの皿。


トースト。


コーヒー。


彼が先に座っている。


少し眠そうに。


彼女がキッチンから出てくる。


「おはよ」


「おはよ」


短い会話。


彼女は席に座る。


一瞬。


手が椅子の背に触れたまま止まる。


それから、座る。


いつもの場所。


向かいが空いている。


足音。


アンドロイドが来る。


「おはようございます」


「おはよ」


二つの声が、わずかに重ならない。


アンドロイドは席に座る。


三人。


同じ配置。


彼がパンに手を伸ばす。


「……いただきます」


彼女も続く。


「いただきます」


一拍。


「……いただきます」


少し遅れて、三つ目。


彼女が小さく笑う。


「それ、もうちょっと普通に言えないの?」


アンドロイドが止まる。


「普通、とは」


「今みたいに」


少し考えてから。


「そのまま言えばいいよ」


数秒。


「理解しました」


間。


「いただきます」


今度は、遅れない。


彼女がうなずく。


「うん」


彼は何も言わない。


コーヒーを飲む。


カップを置く音が少しだけ強い。


「今日さ」


彼女が言う。


「買い物行かない?」


彼は頷く。


「ああ」


一拍。


アンドロイドを見る。


「行くか」


「はい」


少し間がある。


彼女が続ける。


「三人でね」


その言葉のあと、


誰もすぐに動かない。


彼がパンをちぎる。


「どこ行く?」


「いつものスーパーでいいだろ」


彼女が少し顔をしかめる。


「えー」


「せっかく三人なのに」


アンドロイドが言う。


「提案があります」


二人が見る。


「本日は晴天です」


「外出に適しています」


「商業施設への移動を推奨します」


彼女が笑う。


「いいじゃん」


彼を見る。


彼は一瞬だけ考える。


そのあと、


「……まあ、いいか」


決まる。


彼女が笑う。


少しだけ大きく。


パンを口に入れる。


噛む音が、少し速い。


食事が終わる。


彼が立ち上がる。


「準備するか」


「うん」


アンドロイドも立つ。


椅子の引く音が、わずかに遅れる。


廊下ですれ違う。


肩が触れそうで、触れない。


誰も見ない。


玄関。


靴を履く。


並ぶ三人。


彼がドアに手をかける。


止まる。


振り返る。


二人を見る。


口が少しだけ開く。


閉じる。


ドアを開ける。


光が入る。


外の空気。


三人が出る。


並ぶ。


歩き出す。


真ん中の距離が、


ほんの少しだけ広い。


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