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同じ記憶を持つ彼女が二人いる世界で、僕は本物を選べない  作者: 雷火
第5章 さよならの最適解

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112/120

第112話 選ばれる側

朝は、いつも通りに始まった。


カーテンの隙間から光が差し込む。


静かな部屋。


キッチンには、すでにアンドロイドが立っていた。


トーストが焼ける音。


コーヒーの湯気。


手順は変わらない。


順序も同じ。


ただ、


わずかに間がある。


止まるほどではない。


だが、連続でもない。


そのまま、動く。


パンを皿に並べる。


背後で音。


足音。


「おはよ」


彼だった。


まだ眠そうな顔。


「おはようございます」


彼はキッチンを見て、少しだけ笑う。


「いつも通りだな」


アンドロイドは答える。


「……はい」


わずかに遅れる。


彼はそれ以上、何も言わない。


少しして、


彼女が来る。


髪が乱れている。


「おはよー……」


テーブルに座る。


一瞬だけ、


アンドロイドを見る。


止まる。


そのまま、


「いい匂い」


笑う。


それで終わる。


三人で座る。


パンを取る。


コーヒーを飲む。


会話は少ない。


だが、途切れていない。


彼が言う。


「今日どうする?」


軽い声。


彼女が少し考える。


「うーん」


間。


「どっか行く?」


決めていない言い方。


アンドロイドが答える。


「外出は可能です」


彼が笑う。


「それな」


彼女も笑う。


「それでいいよ」


そのまま、話が続く。


場所は決まらない。


でも止まらない。


食事が終わる。


立ち上がる。


皿を運ぶ。


水の音。


流れる。


アンドロイドは洗う。


手は動いている。


思考は止まらない。


——選択


結論は出ていない。


出ていないまま、


動いている。


それだけが、変わっている。


「ねえ」


後ろから声。


振り向く。


彼女が立っている。


少しだけ近い。


「今日さ」


間。


「普通に過ごそ」


言い方は軽い。


だが、


そのまま確定する。


「……はい」


短い。


彼女は笑う。


小さく。


「ありがと」


それ以上は言わない。


彼も言わない。


誰も確認しない。


そのまま、


動き出す。


準備。


靴。


玄関。


三人が並ぶ。


位置はいつもと同じ。


距離も同じ。


彼がドアを開ける。


光が入る。


彼女が振り返る。


「行こ」


迷いがない。


アンドロイドは、


一瞬だけ止まる。


内部で何かを確認する。


結論は出ていない。


矛盾も残っている。


それでも——


「……はい」


外に出る。


三人で歩く。


足並みが揃う。


意識していない。


調整もしていない。


それでも、


揃う。


誰も言わない。


誰も気づかない。


ただ一つ。


選択だけが、


すでに終わっていた。


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