第10話 ボーリング
ゲームセンターを出たころには、
外はすっかり夕方になっていた。
そのまま、駅前のビルに入る。
上の階に、ボーリング場があった。
「やったことある?」
僕が聞く。
「テレビで見たことはある」
「じゃあ初めて?」
「うん」
彼女は少し笑った。
最初は田中。
——ガター。
「うそだろ!」
笑いが起きる。
次は佐藤。
何本か倒す。
彼女の番。
ボールを持つ。
少しだけ重そうに見えた。
一歩、前に出る。
投げる。
ゆっくり転がる。
ピンに当たる。
数本、倒れた。
「おお」
彼女は少し驚いた顔をして、
「倒れた」
と笑った。
「初めてなら上手いよ」
僕が言う。
彼女は、ピンを見ていた。
少しだけ、長く。
「……もう少し倒せそう」
二投目。
さっきと同じように構える。
投げる。
転がる。
当たる。
弾ける。
——ほとんど倒れる。
「……え?」
佐藤が声を出す。
彼女は残った一本を見る。
少しだけ考える。
三投目。
今度は、少しだけ外した。
ボールが流れる。
数本だけ倒れる。
「惜しいな」
田中が言う。
彼女は小さくうなずく。
「うん」
少しだけ笑った。
次のフレーム。
また彼女の番。
同じように投げる。
当たる。
弾ける。
倒れる。
結果は——
さっきと、ほとんど同じだった。
その次も。
その次も。
わずかにズレているはずなのに、
倒れ方だけが、
毎回、同じ順番だった。
「……お前さ」
田中が言う。
「ほんとに初めてか?」
彼女は少し考えてから、
「初めてだよ」
と答えた。
僕は、レーンを見ていた。
同じように転がって、
同じように当たって、
同じように倒れる。
――偶然じゃない。
そう思った。




