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現実世界にダンジョンが現れたが、俺は誰にも従わない  作者: HATENA 
第4章「世界階位」

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第80話「その先」

 静かだった。


 誰もすぐには動かない。

 「……終わったな」


 神崎がぽつりと呟く。


 在真も短く返す。


 「……ああ」


 中央フィールドには戦いの跡だけが残っていた。


 砕けた地面。


 ひび割れの中に、まださっきまでの領域の気配が薄く貼りついている。

 見えている景色は戻っているのに、感触だけが戻りきっていなかった。


 「……見られてるな」


 全員の視線。


 神崎が笑う。


 「……1位だな」


 「……そうだな」


 「……上に来た」


 それだけは分かる。

 レオンが前へ出る。


 「……別だ」


 「……だろうな」


 1位になった実感は妙に薄い。

 景色のほうが先に変わって、そこへ自分が追いついていない感じだった。

 人の視線も、歓声も、少し遠い。

 体の奥に残っているのは達成感より、まだ少しズレた感覚のほうだった。


 短く返した、その時。

 スクリーンがまた点灯した。


 「……まだあるか」


 映像。


 黒。


 「……見覚えあるな」


 境界外。


 あの異様な空間。


 画面越しなのに、皮膚の内側が少し冷えた。

 まだ向こうへ触れたままの場所が、体の中に残っている。


 神崎も顔をしかめる。


 「……あれか」


 だが、レオンは首を振った。


 「……違う」


 「……階層か」


 レオンが言う。


 「……境界外にも“上”がある」


 神崎が舌打ちする。


 「ふざけんなよ。やっと終わった顔できると思ったのに」


 「……終わってほしかったか」


 在真がそう返すと、神崎は一瞬だけ言葉を詰まらせた。


 「……いや。お前はどうせ行くんだろ」


 「……ああ」


 静寂。


 神崎が苦笑する。


 「終わりじゃねぇのかよ」


 ぼやきながらも、目は完全には笑っていない。

 あの先が冗談で済まないことを、もう神崎も分かっていた。


 在真は少しだけ笑った。

 「……最初からだ」


 「……終わらねぇな」


 その時、映像が揺れる。

 黒の奥に、“何か”が映った。


 だが——。


 「……なんだあれ」


 「……強いな」


 レオンが言う。


 「……次はあれだ」


 在真は視線を外さない。


 「……ああ」


 「……行く」


 神崎が肩をすくめる。


 「ほんと止まらねぇな」


 レオンは映像から目を離さないまま言う。


 「……止まらないほうがいい。あそこは途中で認識を外す」


 「脅すなよ」


 神崎が即座に返す。


 「……強いならいい」


 それだけだ。


 そう口にしたあとで、自分でも少し薄いと思った。

 強いものへ行くのは変わらない。

 だが、勝った直後に普通なら出るはずの熱が、前より静かだった。


 ガルが低く鳴く。


 その声だけは妙にはっきり聞こえた。

 人のざわめきより近くて、少しだけ落ち着く。


 在真は小さく息を吐いた。

 「……行くぞ」

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