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現実世界にダンジョンが現れたが、俺は誰にも従わない  作者: HATENA 
第4章「世界階位」

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第79話「頂点」

 「——踏み切る!」


 踏み込む。


 最後の距離。


 「……関係ねぇ」


 在真は剣を振る。


 全力。


 火。


 風。


 水。


 土。


 さらに——。


 領域。


 「……全部乗せる」


 「——斬る!」


 ——バキィィィィィッ!!


 止まる。


 だが——。


 「……押す」


 在真はさらに力を込めた。


 「……まだだ!」


 1位も押し返す。


 拮抗。


 火花が散る。

 だが、その散り方まで半拍遅れて見えた。

 ここでは何もかもが遅い。

 遅いくせに、置いていかれる。


 在真はその感触の中で笑った。


 「……ここだ」


 「……これだ」


 さらに一歩。


 踏み込む。


 「……越える」


 その瞬間、わずかに1位の剣筋がズレた。


 ほんのわずかだった。

 だが、そのわずかだけで十分だった。

 入れる隙間が、ようやく人間の感覚まで落ちてくる。


 「……入った」


 そのまま——。


 斬る。


 ——バキン。


 1位の剣が弾かれる。

 静寂。


 勝った、という感じは薄かった。

 ただ、張りついていた何かを一枚抜いた感触だけが残る。


 1位が一歩下がる。

 「……勝負ありだな」


 小さく笑う。


 「……俺の領域を越えた」

 「……負けだ」


 悔しさより、妙な納得を含んだ声だった。

 負けたというより、通されたと認める声に近い。


 静まり返る。


 誰もすぐには動けない。


 神崎が呟く。


 「……マジかよ」


 安堵より先に、ぞっとした顔だった。

 人間のまま見ていられる線を、少し越えたものを見る顔だ。


 レオンが静かに目を閉じた。


 「……決まったな」


 ウィンドウが開く。


 【世界序列更新】


 【1位:大月 在真】


 【2位:——】


 【3位:——】


 静寂。


 歓声は少し遅れて来た。

 遅れて来たせいで、自分に向けられたものだという感じも薄い。

 遠くの別の場所で鳴っているみたいだった。


 「……上がったな」


 在真は軽く呟く。


 剣を下ろす。


 「……抜いたな」


 1位だった男がこちらを見る。

 「……上に来たな」


 「……ああ」


 短く返す。


 相手の顔は近い。

 だが、さっきまで張っていた距離の膜だけがまだ残っている。

 勝ったあとでも、完全には普通の地面へ戻れていなかった。


 すると男が言う。


 「……ここからだ」


 在真も頷く。


 「……分かってる」


 視線を上へ向ける。


 空。


 何もない。


 何もないはずなのに、もうその奥を探している自分がいる。

 終わったと息を吐く感じが、少しだけ薄い。


 「……まだあるな」


 その確信だけは、もう揺がない。


 上へ向けた視線のほうが自然だった。

 下へ戻る感覚は、さっきより少しだけ遠い。


 少しだけ笑う。


 「……いい」

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