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現実世界にダンジョンが現れたが、俺は誰にも従わない  作者: HATENA 
第4章「世界階位」

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第78話「重ね」

 「……届いてる」


 剣がぶつかる。


 在真は笑う。


 「……乗れるな」


 「……ここからだ」


 踏み込む。


 領域の中。


 ズレ。


 歪み。


 金属のぶつかる音だけが妙に近い。

 それ以外の音は、薄い膜の向こうへ押しやられていた。


 「……嫌な静けさだな」


 心臓の音まで遠い。

 このまま踏み込み続ければ、鼓動のほうが先に置いていかれそうだった。


 「……分かる」


 「……乗れるな」


 1位が動く。


 「……来る」


 未来視。


 「……見えねぇ」


 だが——。


 「……感じる」


 回避。


 さらに、そのズレに沿って自分の体を滑らせる。


 「……合わせる」


 「……そこだ」


 斬る。


 ——ガキンッ!!


 当たる。


 1位がわずかに下がる。


 「……いい」


 1位が笑う。


 「……乗ってきたな」


 「……ああ」


 ここでようやく、相手の輪郭が少しだけ近くなる。

 遠かったものへ、無理やり指をかける感じだった。


 踏み込む。


 連続。


 「……滑らせる」


 ——ガキンッ、ガキンッ、ガキンッ!!


 全部ぶつかる。


 「……全部届く」


 その瞬間、領域が揺れた。


 「……来るぞ」


 1位の気配がさらに上がる。


 「……まだあるか」


 在真はむしろ笑う。


 「……崩れかけてるな」


 踏み込む。


 「……もっと上げる」


 レオンが外から何か言っている。

 聞き取れたのは最後の一語だけだった。


 「……保持しろ」


 「……分かってる」


 保つべきなのは姿勢じゃない。

 自分が自分だという感覚のほうだ。


 火。


 風。


 水。


 土。


 「……混ぜる」


 自分の外にある理屈ごと、一撃へ巻き込む。

 自分の感覚まで一緒に混ざる。

 そのせいで一瞬、手の中の剣が剣じゃなくなる。

 それでも離す気にはならなかった。


 「——斬る!」


 ——バキィィッ!!


 今までより深い。


 「……入ったな」


 1位が止まる。


 「……いい」


 低く言う。


 その瞬間、領域そのものが崩れはじめる。


 「……っ?」


 空間が揺れる。

 上下が戻りきる前に、別のズレが割り込んでくる。

 立っているだけで酔いそうだった。


 神崎が外から叫ぶ。


 「おい! やりすぎだ!」


 その声すら、今は少し遅れて届く。

 踏み込み方を間違えれば、声のほうだけが先に消えそうだった。


 だが——。


 「……関係ねぇ」


 止まらない。


 ここで手を緩めたら、たぶん領域のほうに形を合わせられる。

 それが一番、面倒だった。


 「……ここで決める」


 踏み込む。


 最後の距離。


 「……届く」


 剣を振る。


 「——踏み切る!」

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