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現実世界にダンジョンが現れたが、俺は誰にも従わない  作者: HATENA 
第4章「世界階位」

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第77話「侵入」

 「……超える」


 踏み込む。


 領域の中。


 「……全部ズレてるな」


 神崎が外から叫ぶ。


 「在真! 無理すんな!」


 「……無理じゃねぇ」


 在真は視線を前へ固定した。


 「……やるだけだ」


 踏み込む。


 領域の中では、自分の呼吸まで少し遅れる。

 吸ったはずの空気が、半拍あとに肺へ落ちてくる。


 「……気持ち悪いな」


 足を出すたび、体の重さだけが少し遅れてついてくる。

 いつもの調子で動くと、自分のほうが空間からはみ出す。


 だが——。


 「……遅い」


 次の瞬間。


 ——ドンッ!!


 直撃。


 体が大きく流される。

 領域の中では、受ける衝撃の到達位置まで微妙にズレていた。


 「……削られるな」


 腕の感覚が一瞬だけ薄れる。

 見えてはいるのに、そこに自分の肉がある実感が揺らいだ。


 それでも——。


 「……まだ動ける」


 立ち上がる。


 痛い。


 だが、それだけだ。

 痛みがあるうちは、まだ自分の輪郭が残っている。

 何も感じなくなるほうが、たぶん厄介だった。


 「……痛ぇな」


 笑う。


 「……これが上か」


 「……規則あるな」


 「……癖がある」


 完全な無秩序じゃない。

 押し返す場所と、通してくる場所がある。


 レオンの声が飛ぶ。


 「……右だ。そこだけ遅れている」


 「……分かってる」


 外から見ている二人がいる。

 それだけで、まだ完全にはずれていないと分かる。


 その瞬間、1位が動く。


 「……来る」


 未来視。


 まだ完全には見えない。


 「……見えねぇ」


 だが——。


 「……感じる」


 回避。


 ギリギリ。


 衝撃の線だけを避ける。


 「……当たらねぇな」


 回避したはずの場所を、遅れて寒さが撫でていく。

 斬られてはいない。

 だが、輪郭の表面だけ剥がされたみたいで気分が悪い。


 踏み込む。


 今度は自分の側を相手に合わせる。

 無理やり突破するんじゃない。

 まずはズレに乗る。


 「……合わせる」


 空間に。


 ずれた時間に。


 「……そこだ」


 剣を振る。


 ——ガキンッ!!


 止まる。


 確かな衝突。


 「……入ったな」


 1位の目がわずかに細くなる。


 「……侵入してきたか」


 「……ああ」


 確信になる。


 「……分かる」


 「……使えるな」


 1位が笑う。


 「……嫌な領域だな」


 寒い。

 皮膚だけじゃなく、感覚そのものが冷えていく感じがする。

 ここに慣れすぎると、普通の場所へ戻った時のほうが薄く見えそうだった。


 次の瞬間、領域がさらに歪んだ。


 「……来るぞ」


 在真は笑う。


 「……でも慣れる」


 慣れたくはなかった。

 こんな場所に体を合わせるたび、普通の地面のほうが遠くなる気がする。


 踏み込む。


 「……外じゃない」


 「……ここでやる」


 剣を構える。


 「——斬る!」


 ——ガキンッ!!


 完全な衝突。


 「……届いてる」

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