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現実世界にダンジョンが現れたが、俺は誰にも従わない  作者: HATENA 
第4章「世界階位」

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第76話「本気」

 「……ここからだ」


 1位がそう言った瞬間、空気が一段沈んだ。


 重い。


 「……来るな」


 1位が動く。


 ——消える。


 「……速い!」


 未来視。


 だが、もう視界だけでは追えない。


 「……見えねぇ」


 それでも——。


 「……感じる」


 回避。


 ——ドンッ!!


 地面が消し飛ぶ。


 「……重すぎるな」


 在真はそのまま踏み込む。


 「——斬る!」


 ——ガキンッ!!


 止められる。


 「……受けるか」


 「……いい一撃だ」


 次の瞬間、押し返される。


 「……っ」


 距離が開く。


 「……違うな」


 今までとは全部が違う。


 「……全部が上だ」


 「……寒いな」


 笑う。


 寒いのは気温じゃない。

 自分の輪郭が、少し遠くへずれる感じだった。


 「……だから抜く」


 踏み込む。


 連続。


 単発で崩れないなら、重ねて押すしかない。


 「……合わせる」


 ——ガキンッ、ガキンッ、ガキンッ!!


 全部受けられる。


 だが、完全じゃない。

 1位の姿勢がわずかに揺れる。


 「……崩れるな」


 1位が低く言う。


 「……来るぞ」


 次の瞬間、世界が“ズレた”。


 「……っ!?」


 上下が消える。


 位置が変わる。


 地面だと思ったものが横へ滑り、空間のほうがこちらを振り回してくる。


 神崎が叫ぶ。


 「……なんだこれ」


 1位が言う。


 「……これが俺の領域だ」


 「……領域か」


 レオンが低く言う。


 「……空間そのものじゃない。認識の足場をずらしている」


 「面倒なことを言うな!」


 神崎の怒鳴り声が重なる。


 在真は笑う。


 「……面倒だな」


 「……なら」


 踏み込む。


 だが——。


 「……遅い」


 1位の声。


 次の瞬間。


 ——ドンッ。


 直撃。


 「……ぐっ!」


 体が吹き飛ぶ。


 地面へ叩きつけられた時には、自分がどの方向へ飛ばされたのかすら半拍遅れてやってきた。

 耳の奥で、遅れて鈍い音が鳴る。

 衝撃より、感覚の順番が狂うほうが鬱陶しい。

 吐いた息まで、自分の口から少し遅れて出ていくようだった。


 「……重いな」


 立ち上がる。


 「……ここが上か」


 その場で構える。


 「……薄い」


 足裏の感触が曖昧だった。

 地面を踏んでいるはずなのに、半歩ぶんだけ自分が浮いている気がする。

 長くいたら、立っている感覚から先に消えそうだった。


 少しだけ笑う。


 「……耐える」


 踏み込む。


 領域の中へ。


 神崎が外から何か怒鳴っている。

 だが、言葉の半分が削れていた。

 音までズレている。

 レオンの声だけは妙に細く通ってくる。


 「……長くいるな。固定される」


 「……静かだな」


 嫌な領域だった。

 だからこそ、ここで止まる気にもならない。

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