第74話「頂点前」
夜。
基地の屋上は静かだった。
風だけが流れている。
「……明日か」
在真は空を見上げる。
何もない。
だが、そこに何もないまま終わるとは思っていなかった。
「……変わるな」
足音が近づく。
「……来たか」
振り向くと、レオンが一人で上がってきた。
「……一人か」
「……ああ」
隣に並ぶ。
しばらく、無言。
妙な気まずさはない。
やがてレオンが聞いた。
「……どうだ」
「……何がだ」
「……届くか」
少し考える。
だが、答えはすぐ定まる。
「……届く」
即答だった。
レオンが小さく笑う。
「……そうか」
また静かになる。
風の音だけが通る。
レオンが言う。
「……あいつは別だ」
「……分かってる」
1位。
最初に触れたあの感覚。
「……ああ」
だが——。
「……関係ねぇ」
短く言う。
レオンが頷く。
「……だろうな」
その時、別の足音が上がってきた。
神崎だ。
「お前ら、ここか」
軽く手を上げる。
「……寝ねぇのか」
「……無理だな」
神崎が笑う。
「俺もだ」
三人並ぶ。
夜風が一度、同じ方向へ流れた。
神崎が空を見上げる。
「……ここまで来るとはな」
少し笑う。
「最初、死にかけてたのにな」
「……ああ」
在真も思い出す。
「……変わったな」
「……だな」
「……まだ足りねぇ」
視線を前へ戻す。
「あいつがいる」
1位。
「……抜く」
それだけだ。
神崎が笑う。
「言うねぇ」
レオンも小さく頷く。
「……いい」
しばらくまた静かになる。
風が流れる。
やがて在真が短く言う。
「……明日だ」
「……ああ」
目を閉じる。
戦いをイメージする。
動き。
速度。
あの、当てさせない感覚。
あの、無造作に一段上へ行く重さ。
「……次は、越える」
目を開ける。
空は変わらない。
「……静かすぎるな」
少しだけ笑う。




