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現実世界にダンジョンが現れたが、俺は誰にも従わない  作者: HATENA 
第4章「世界階位」

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第72話「不可視」

 「……静かすぎるな」


 踏み込む。


 特異個体は確かにそこにいる。

 だが、輪郭がない。

 「……見えねぇ」


 神崎が構えたまま吐き捨てる。


 「今までより酷いぞこれ」


 「……ああ」


 「……問題ねぇ」


 在真は目を細める。


 「……来る」


 体が先に反応した。


 横へ。


 ——ドンッ。


 水面が大きく凹む。


 「……速いな」


 次。


 後ろ。


 「……そこ」


 回避。


 連続。


 攻撃のたびに、水面だけが不自然に沈む。


 姿は見えない。

 だが、完全なランダムでもない。


 「……間隔あるな」


 「……癖ある」


 その瞬間、在真は前へ出た。


 「……行く」


 何もない空間へ踏み込む。

 だが——。


 「……そこだ」


 剣を振る。


 ——スッ。


 浅い。


 「……触れたな」


 特異個体がわずかに揺れる。


 神崎が叫ぶ。


 「当たってる!」


 レオンがすぐ前に出る。


 「……合わせる」


 「……固定できるか」


 だが、特異個体は逃げる。

 位置が安定しない。

 当たったと思えば、次の瞬間には別の位相へずれている。


 「……普通じゃ無理だな」


 「……なら」


 在真はさらに踏み込む。


 「……数で押す」


 「……当て続ける」


 ——スッ、スッ、スッ。


 少しずつ揺れる。


 だが、まだ足りない。


 「……足りねぇな」

 斬れているのに、掴めていない。

 切った手応えが、すぐ水の下へ沈んで消える。


 その瞬間、特異個体が変わる。


 「……来るぞ」


 水面が一斉に歪んだ。


 周囲全部。


 神崎が顔をしかめる。


 「……全部かよ」


 全方向。


 「……無理だな」


 だが——。


 「……関係ねぇ」


 在真は踏み込む。


 「……殺すんじゃない」


 「……止める」


 「……一瞬でいい」


 全無視。


 波立つ攻撃圧を突っ切って、特異個体の核になっている一点へ。


 「……そこだ」


 剣を叩き込む。


 ——バキッ。


 「……入ったな」


 特異個体が大きく揺れる。


 神崎が突っ込む。


 「……効いてる!」


 「今だ!」


 拳が重く落ちる。


 ——ドンッ。


 レオンも圧を重ねる。


 「……押し込む」


 「固定は一拍だ」


 空間が歪む。


 特異個体のズレが、ほんの一瞬だけ止まった。


 「……見えた」


 中心。


 「……核だな」


 在真は目を細める。


 「……触れればいい」


 剣を構える。

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