第71話「特異」
移動中のヘリは、妙に静かだった。
神崎が地図を見ながら言う。
「……場所どこだ」
「……海上か」
「……ああ」
「……妙だな」
「……だな」
普通じゃない。
その時、前方のパイロットが声を上げた。
「……見えたぞ」
全員の視線が下へ落ちる。
「……なんだこれ」
海だ。
なのに、海に見えない。
「……止まってるな」
神崎が呟く。
レオンが低く言う。
「……空間ごとだな」
ヘリが近づく。
その瞬間、在真の感覚がわずかに引っかかった。
「……っ」
「……軽い?」
「……逆か」
「……これ、やばいな」
神崎が顔をしかめる。
着陸。
外に出る。
「……おい」
神崎が軽く跳ねる。
「沈まねぇぞ」
「……固定されてるな」
「まずこれを読む」
気配がない。
何も感じない。
それなのに、空間そのものだけが何かを隠している。
「……変だ」
「……どこだ」
周囲を見る。
その時——。
——スッ。
空気が揺れた。
「……来るな」
視線の先には何もない。
だが——。
「……いる」
確実に。
神崎が構える。
「……見えねぇぞ」
「……感じろ」
在真が短く言った直後、水面が大きく凹む。
——ドンッ。
「……は?」
何も見えない。
だが攻撃だけがある。
「……来てる」
回避。
——ドンッ。
衝撃だけが遅れて残る。
レオンが前に出る。
「……これが特異個体か」
その時、水面がわずかに歪んだ。
「……出るぞ」
そこから、“何か”が浮かび上がる。
形はある。
だが、定まらない。
人型とも獣とも、ただの影ともつかない。
「……またか」
神崎が苦い顔をする。
「……違う」
「……もっと上だな」
「……気持ち悪いな」
在真は少しだけ笑う。
剣を構える。
「……まず触る」
「……固定の芯を出させる」




