第69話「二位」
「……次は、抜く」
ホールが静まり返る。
1位が去ったあとも、誰もすぐには動けなかった。
その余韻を切るように、別の声が落ちる。
「なら、俺だな」
振り向く。
さっきの男とは違う気配。
だが、軽いわけじゃない。
「……2位か」
神崎が呟く。
「……だな」
「……強いな」
確実に。
2位が軽く笑う。
「……来るか?」
在真は迷わない。
「……来い」
踏み出す。
周囲が少し距離を取る。
さっきまでは見物だった連中も、今度は少し本気で巻き込まれたくない顔をしていた。
レオンは黙って見ている。
神崎は腕を組んだまま、視線だけ鋭い。
2位が構える。
「……速いぞ」
次の瞬間。
——消える。
「……来た」
未来視。
今の在真には、さっきよりわずかに輪郭が見える。
「……見える」
回避。
——ドンッ!!
床が抉れる。
空振りしたはずなのに、そこでようやく衝撃が現実に落ちた。
「……遅れてくるか」
在真はすぐ踏み込む。
「——斬る!」
——ガキンッ!!
受けられる。
2位はまともに刃を止めた。
「……重いな」
2位が笑う。
「その一撃、いい」
押し返される。
距離が開く。
「……次だ」
2位が再び踏み込む。
速い。
だが——。
「……読める」
回避。
そのまま斬り返す。
「——斬る!」
——ガキンッ!!
再び受けられる。
「……通らねぇな」
「簡単にはな」
2位の声は軽い。
「……だが」
在真は踏み込む。
連続。
単発で崩れないなら、次の段を使わせるしかない。
「……上げさせる」
——ガキンッ、ガキンッ、ガキンッ!!
防がれる。
「……崩れるな」
2位が笑う。
「……そこを見たか」
そして次の瞬間、さらに速度が上がる。
「来るぞ」
「……速い!」
未来視。
今の在真でも、完全には追えない。
「……ギリだな」
回避。
だが掠る。
肩口に浅い熱が走る。
「……浅い」
2位が言う。
「浅くても入るだろ」
その言葉の直後、衝撃が追いかけてきた。
「……っ!」
体が吹き飛ぶ。
「……重いな」
立ち上がる。
「……遠いな」
笑う。
「……まだ上がある」
踏み込む。
今度は次で崩すつもりで、最初から全部を乗せる。
火。
風。
水。
土。
「……次で崩す」
「——斬る!」
——バキッ!!
確かなヒビが入る。
「……入ったな」
2位の目が細くなる。
「……やるな」
だが、次の瞬間にはそれも戻った。
まだ決定打には遠い。
「……まだだな」
2位が踏み込む。
直後、視界が歪む。
「……っ!」
衝撃。
——ドンッ!!
吹き飛ぶ。
今のは、さっきまでと違った。
「……一段上か」
2位が言う。
「……これ以上は」
一瞬、間を置く。
「今はやめとくか」
構えを解く。
神崎が声を上げた。
「……は?」
「勝負ついてねぇだろ!」
2位が笑う。
「いや、分かった」
在真が短く聞く。
「……何がだ」
「届くってことだ」
まっすぐこちらを見る。
「……あと少しでな」
背を向ける。
「今はここまででいい」
「二段目を使わせた時点で、今日は十分だ」
そのまま去っていく。
神崎が呟く。
「……なんだそれ」
在真は少しだけ笑った。
届く。
しかも、相手もそれを認めた。
「……悪くねぇ」
剣を握り直す。
「……次は抜く」




