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現実世界にダンジョンが現れたが、俺は誰にも従わない  作者: HATENA 
第4章「世界階位」

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第68話「一位」

 「……試すか?」


 その言葉が落ちた瞬間、ホールの空気が止まった。


 誰も動かない。


 だが——。


 「……鬱陶しいな」


 在真はそのまま一歩踏み出す。


 男が軽く笑う。


 「……来い」


 構えはない。


 神崎が小さく舌打ちした。


 「……舐めてるな」


 在真は最短で間合いへ入る。

 「——斬る!」


 刃が走る。


 だが——。


 ——スッ。


 「……は?」


 当たらない。


 「……そこにいねぇ」


 在真はすぐに踏み直す。


 もう一度。


 角度を変える。


 連続で詰める。


 「——斬る!」


 ——スッ。


 「……全部抜けるか」


 男は一歩も動いていない。

 それでも、すべて外れる。


 神崎が呟く。


 「……どうなってる」


 レオンも黙って見ている。目だけが鋭い。


 「……違うな」


 「……当てさせてない」


 男が笑う。


 「正解だ」


 その瞬間、男が動いた。


 ——消える。


 「……っ!」


 次の瞬間、背後。


 「……来た!」


 回避。


 ——ドンッ。


 衝撃が走る。


 「……速いな」


 体勢を戻す。


 男はもう元の位置に立っていた。

 まるで一度もそこを動いていないみたいに。


 「……今の見えたか?」


 神崎の声が遠くから飛ぶ。


 「……ギリだな」


 在真は口の端だけ動かした。


 「……嫌いじゃない」


 さらに踏み込む。


 ここでためらっても意味がない。


 「……本気でいく」


 火。


 風。


 水。


 土。


 四属性を一つの斬撃へ重ねる。


 「——斬る!」


 ——ガキンッ!!


 今度は違った。


 確かな衝突。


 わずかにだが、男の体が揺れる。

 周囲がざわついた。


 「……ほう」


 男が初めて、はっきり目を細める。


 「……触れたか」


 「……ああ」


 在真の口元にも、わずかな笑みが浮かぶ。


 「……いけるな」


 その瞬間、男の気配が変わった。


 「……来るな」


 圧が上がる。


 今までとは違う。


 さっきまでは試し。

 男が軽く言う。


 「……少し上げるか」


 次の瞬間。


 視界が消えた。


 「……っ!?」


 何も見えない。


 何も感じない。


 その無の中から——。


 ——ドンッ。


 体が浮く。


 「……ぐっ!」


 吹き飛ぶ。


 床を大きく滑って、止まる。

 在真は立ち上がった。

 男は、また動いていないように見える。


 「……今のは」


 「……次元が違うな」


 神崎が呟く。


 「……ああ」


 だが——。


 在真は息を吐いた。


 「……遠いな」


 「……まだ上がある」


 剣を構える。


 男が小さく笑った。


 「……合格だ」


 それだけ言う。


 「……ここまででいい」


 空気が戻る。


 張り詰めていた圧が、わずかにほどけた。


 神崎が呟く。


 「……合格?」


 男は背を向ける。


 「……3位で止まる器じゃない」


 歩き出しながら、最後に一言だけ残した。


 「……上がってこい」


 そのまま去っていく。

 静けさだけが残る。

 在真は剣を軽く振った。


 「……薄いな」


 さっきの一瞬だけで、自分がまだ届いていない層の感触が残っている。


 「……次は、勝つ」

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