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現実世界にダンジョンが現れたが、俺は誰にも従わない  作者: HATENA 
第3章「境界外」

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第65話「最深」

 「……来い」


 在真が低く言う。


 源が動く。


 最後の抵抗だった。

 周囲の空間が一気に濃くなる。

 足元の感覚が消え、前後左右の意味が曖昧になり、こちらの身体のほうが異物として押し出されそうになる。

 立っているだけで、自分の輪郭が少しずつ外へこぼれていく。

 ここに長くいたら、人の形のほうが先に保てなくなりそうだった。


 神崎が叫ぶ。


 「これ、さっきまでのよりヤバいぞ!」


 レオンも前へ出る。


 「……抑える」


 源の圧を少しでもずらすために、レオンが干渉を重ねる。

 完全には止まらない。

 だが、一瞬だけ通り道ができた。


 在真はそこへ踏み込む。


 「……見えた」


 核。


 外殻の奥で脈打つ一点。

 周囲の歪み全部が、結局はそこから広がっている。


 「……そこだ」


 神崎が横から押し込む。


 「ぶち抜け!」


 火。


 風。


 水。


 土。


 さらに今いる“外側”の歪みさえ、まとめて刃の流れに乗せる。


 「——斬る!」


 ——バキィィッ!!


 核にヒビが入る。


 だが、まだ砕けない。


 在真はそのまま前へ出る。


 「……まだだ」


 源の圧が正面からぶつかる。

 存在の輪郭を削るような重さ。

 肩から腕へ嫌な痺れが走る。

 押し返されれば、そのまま向こうの理屈に飲まれるのが分かった。

 腕だけじゃない。

 名前のついた自分ごと、少しずつ磨り減らされていく感じがする。


 それでも——。


 「……押す」


 剣をさらに押し込む。

 神崎が歯を食いしばる。

 レオンも低く息を吐く。

 全員の圧が、核の一点へ集まる。


 「……今だ」


 「——終わりだ」


 ——パキン。


 小さな音。


 だが、それで十分だった。


 核が砕ける。


 瞬間、源の輪郭が大きく揺れた。

 群れていた異形たちも、まとめて形を失い始める。


 神崎が息を呑む。


 「……来た!」


 在真は剣を振り抜く。

 源の本体が、そこから一気に裂けた。


 「……終わったな」


 静寂。

 この空間そのものが、一拍遅れて戦いの終わりを理解したみたいに静かになる。

 静かになったのに、耳の奥ではまだ嫌な圧が鳴っていた。


 だが、それで終わりじゃなかった。


 空間の奥。

 さらに遠い場所で、別の脈動がかすかに返ってくる。


 レオンが低く言う。


 「……これでも入口だ」


 在真は少しだけ笑った。


 「……だろうな」

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