第64話「突破」
「……次で壊す」
在真がそう言った瞬間、源の気配が一段重くなった。
見抜かれたと分かったのだろう。
周囲の空間が、さっきまでよりはっきりこちらを拒絶し始める。
空気そのものが、肌の上から押し返してくる。
前へ出るだけで、薄い壁を何枚も破っているみたいだった。
レオンが短く言う。
「……来るぞ」
源が動く。
今度は正面からじゃない。
空間そのものが少し折れ、そっちから現れる。
「……またその手か」
神崎が歯を食いしばる。
在真は踏み込む。
見えている位置は捨てる。
歪みの中心だけを追う。
「……そこ」
回避。
直後に衝撃が落ちる。
——ドンッ。
「……読めるな」
まだ完璧じゃない。
それでも、体はもうこういうズレ方を覚え始めていた。
躊躇して止まるほうが危ない。
考えてから動くと間に合わない。
先に足が出るほうが、まだましだった。
神崎が横から圧をかける。
「今だ!」
レオンも空気を押さえる。
「……通せ」
在真は一直線に核へ向かった。
「——斬る!」
——バキッ。
外殻にさらにヒビが入る。
だが、まだ足りない。
源が暴れる。
群れの異形たちも、遠くから一斉にこちらへ押し寄せ始める。
遠いはずなのに、気配だけ先に首筋へ触ってくる。
数が増えるほど、空間の奥行きまで濁っていった。
神崎が振り向きざまに殴り飛ばしながら笑う。
「ほんとキリねぇな!」
「……もう少しだ」
在真は剣を握り直す。
火。
風。
水。
土。
全部を、ひとつの一点突破へ寄せる。
「……全部乗せる」
源がもう一度正面から来る。
だが——。
「……遅い」
歪みの内側へ潜り込む。
今度は完全に核だけを見る。
視界の端で何が暴れていても、そこだけ濃い。
他は全部、そこへ届くまでの邪魔でしかなかった。
「——貫け!」
——バキィィィッ!!
深い。
外殻が大きく剥がれ、核が半分ほど露出した。
神崎が叫ぶ。
「見えた!」
レオンもすぐ言う。
「……次で終わる」
在真は笑った。
「……ああ」
源の気配がさらに跳ね上がる。
最後の抵抗。
空間全体が一瞬だけ逆巻く。
足元が消えかける。
それでも、引く感じだけはしなかった。
それでも、もう怯まない。
「……来るなら来い」
剣を構える。




