第63話「干渉」
源が、一歩踏み出す。
その動きは遅く見えた。
だが、次の瞬間にはもう距離の意味が消える。
「……来る」
在真の体が先に反応する。
回避。
——ドンッ。
さっきまで自分がいた位置の空間が、鈍く沈む。
「……重いな」
ただ速いだけじゃない。
近づかれた場所そのものが、少しだけ向こうの理屈へ塗り替えられる感じがある。
神崎が横から突っ込む。
「なら押し返す!」
拳。
——ドンッ。
当たる。
だが、源の輪郭は大きく崩れない。
レオンが低く言う。
「……外殻が厚い」
在真は笑う。
「……なら剥がす」
踏み込む。
「——斬る!」
——ガキンッ。
硬い。
それでも、表面に確かな傷は入る。
「……通るな」
源が揺れる。
次の瞬間、周囲の空間が大きく歪んだ。
神崎が舌打ちする。
「またこの感じか」
異形の群れを生んでいた時より、さらに濃い。
源に近づくほど、こっちの理屈のほうが薄くなる。
「……面倒だな」
だが、単純に避けるだけでは終わらない。
「……見える」
在真は歪みの流れを見る。
完全な混沌じゃない。
源を中心に、一定のパターンで拡がっている。
「……そこだ」
崩れる前提で踏み込む。
「——斬る!」
——バキッ。
今度は深い。
源の外殻が一部剥がれた。
神崎が笑う。
「やっぱそう来るよな!」
レオンもすぐ圧を重ねる。
「……続けろ」
在真はそのまま連続で斬る。
速さじゃない。
剥がした場所へ、同じ圧を何度も通す。
「……重ねる」
——ガキンッ、バキッ、ガキンッ。
だが、向こうも黙ってはいない。
急に源の形が揺れ、別方向から圧が噛みついてくる。
「……横!」
神崎が叫ぶ。
在真は体をひねって避ける。
掠っただけで、肩口の感覚が少し持っていかれた。
「……削ってくるな」
ただの打撃じゃない。
こっちの存在の輪郭を薄くするような触れ方だ。
「……いい」
少しだけ笑う。
なら、削り合いだ。
「……やることは同じだな」
源を見る。
外殻の奥に、わずかに濃い一点がある。
「……核あるな」
レオンも気づいたように言う。
「……あそこだ」
神崎が構える。
「じゃあ次で割るぞ」
在真は頷いた。
「……いい」
「……次で壊す」




