第60話「外側」
静かだ。
完全に、何もない。
「……消えたな」
神崎が周囲を見る。
「……ああ」
さっきまでいた“影”。
跡すら残っていない。
「……普通じゃねぇな」
レオンが小さく呟く。
その時。
——ピシッ。
音。
「……まだあるな」
空を見る。
わずかに、歪んでいる。
「……消えてねぇ」
裂け目。
完全には閉じていない。
「……行くか」
踏み出す。
「……おい」
神崎が止める。
「中、分かんねぇぞ」
「……だろうな」
だが——
「……だからいい」
迷いはない。
レオンがこちらを見る。
「……行くのか」
「……ああ」
短く答える。
少しの沈黙。
レオンが頷く。
「……俺も行く」
神崎がため息をつく。
「……結局それかよ」
「……置いてくのも面倒だ」
軽く返す。
ガルが前に出る。
「……いいな」
そのまま——
裂け目へ。
足を踏み入れる。
その瞬間。
視界が歪む。
「……っ」
感覚が消える。
上下が分からない。
音もない。
「……なんだこれ」
次の瞬間。
視界が戻る。
「……ここは」
何もない。
地面も。
空も。
ただ——
「……広いな」
無限のような空間。
「……外か?」
神崎が呟く。
「……違うな」
感覚で分かる。
「……内側じゃない」
今までのダンジョンとは違う。
「……完全に別だ」
レオンが静かに言う。
その時。
——ドクン。
音。
「……来るな」
遠く。
何かが動く。
だが——
形が分からない。
「……見えねぇ」
だが、確実にいる。
「……増えてるな」
気配が一つじゃない。
「……複数だ」
神崎が構える。
「帰るか?」
「……いや」
即答。
「……進む」
ここまで来た。
引く理由はない。
「……いいな」
少しだけ笑う。
剣を構える。
「……ここが」
確信。
「……“外側”か」




