第57話「無音」
視界が戻る。
「……さっきのは」
感覚がずれている。
「……見えてたのに、見えてねぇ」
影は、そこにいる。
動いていない。
なのに——
「……当たる」
さっきの一撃。
「……未来視、効いてねぇな」
ガルが低く唸る。
神崎が横に並ぶ。
「どうなってる」
「……分からん」
正直に答える。
レオンが前に出る。
「……触るな」
短く言う。
だが——
影が動く。
音がない。
気配もない。
「……来るぞ」
分かるのは“結果”だけ。
未来視を使う。
だが——
「……見えねぇ」
何も映らない。
次の瞬間。
——ドンッ。
神崎が吹き飛ぶ。
「……ぐっ!」
「……見えたか?」
「……いや」
神崎が立ち上がる。
「……何もねぇ」
レオンが動く。
「……止める」
踏み込む。
その瞬間。
空気が歪む。
だが——
「……効いてない」
影は止まらない。
「……おい」
レオンが一瞬、後ろに引く。
「……これは」
初めて。
レオンが迷う。
「……面白いな」
笑う。
「……どうやるか」
観る。
影。
動き。
存在。
「……違うな」
今までと。
「……攻撃じゃない」
「……何だ」
神崎が聞く。
「……“触れてるだけ”だ」
それだけで、ダメージになる。
「……意味わからんぞ」
「……だろうな」
だが——
「……なら」
考える。
「……こっちも変える」
剣を握る。
「……見るな」
目を閉じる。
「……は?」
神崎が声を上げる。
「……感覚だけでいく」
視覚は意味がない。
未来視も効かない。
なら——
「……感じる」
静かに立つ。
影が動く。
分からない。
だが——
「……来る」
一歩、ずれる。
——ドンッ。
当たらない。
「……避けた?」
神崎が驚く。
「……分かるな」
もう一度。
影が動く。
「……そこ」
回避。
当たらない。
「……なるほどな」
目を開ける。
「……いける」
剣を構える。
「……次は当てる」
踏み込む。
影へ。




