第56話「境界」
夜。
空が、揺れる。
「……来たな」
外に出る。
風が止まっている。
音がない。
「……おかしいな」
神崎が周囲を見る。
「……静かすぎる」
その瞬間。
——ピシッ。
音。
空。
「……割れた?」
細い線。
それが——
広がる。
「……来るぞ」
レオンが前に出る。
全員、構える。
「……これは」
今までと違う。
圧がない。
だが——
「……軽すぎる」
逆に。
嫌な感覚。
次の瞬間。
——パキン。
空が“開く”。
音もなく。
そこから——
“何か”が落ちる。
ゆっくり。
静かに。
「……人?」
影。
形は人間。
だが——
違う。
「……気配がねぇ」
存在感がない。
なのに——
そこにいる。
「……やばいな」
神崎が小さく呟く。
レオンが一歩前に出る。
「……止まれ」
声をかける。
だが——
反応がない。
そのまま、地面に降りる。
「……動くぞ」
影が顔を上げる。
その瞬間。
全員が理解する。
「……違うな」
今までと。
「……これは」
言葉が出ない。
影が、一歩踏み出す。
——ドンッ。
何もしていない。
だが——
地面が沈む。
「……は?」
圧じゃない。
“存在”で押している。
「……おいおい」
神崎が笑う。
「……なんだよこれ」
レオンの目が細くなる。
「……下がれ」
短い指示。
だが——
「……いや」
前に出る。
「……在真」
神崎が呼ぶ。
「……分かってる」
視線を向ける。
影。
「……強いな」
それだけでいい。
踏み込む。
その瞬間——
視界が“消える”。
「……っ?」
何も見えない。
音もない。
「……なんだこれ」
次の瞬間。
——ドンッ。
体が吹き飛ぶ。
「……ぐっ!」
地面を転がる。
「……見えねぇ」
起き上がる。
影は——
動いていない。
「……おい」
神崎が構える。
レオンも前に出る。
「……別格だ」
誰が見ても分かる。
「……いいな」
笑う。
「……最高だ」
剣を構える。




