第55話「兆し」
基地に戻る。
空気が違う。
緊張が消えている。
だが——
静かすぎる。
「……落ち着いたな」
神崎が伸びをする。
「……一旦な」
短く返す。
歩く。
人の動きが変わっている。
慌ただしさはない。
代わりに——
「……様子見だな」
次を待っている。
「……嵐の前ってやつか」
神崎が笑う。
「……だろうな」
その時。
「大月 在真」
呼ばれる。
振り向く。
レオン。
「……来い」
短い。
「……分かった」
後をつく。
奥へ。
また別の部屋。
前とは違う。
もっと深い場所。
「……ここか」
扉が開く。
中。
暗い。
中央に、一つのスクリーン。
「……何だ」
レオンが止まる。
「……これだ」
映像が映る。
黒。
何もない。
だが——
「……違うな」
“ある”。
空間が歪んでいる。
「……どこだこれ」
神崎が眉をひそめる。
「……観測だけされている」
レオンが言う。
「まだ発生していない」
「……でも」
視線を外さない。
「……来る」
確信。
映像が動く。
わずかに。
“何か”が蠢く。
「……でかいな」
今までとは違う。
比べる対象がない。
「……次はこれだ」
レオンが言う。
静かに。
「……面白いな」
少しだけ笑う。
神崎が横で呆れる。
「お前ほんと変わらねぇな」
「……強いならいい」
それだけだ。
レオンがこちらを見る。
「……準備しろ」
「……ああ」
部屋を出る。
空気が重い。
だが——
「……いいな」
ガルが低く鳴く。
「……行くぞ」




