第35話「救出」
視界の先。
崩れかけたビルの一角。
その前に——
膝をついたまま動けない民間人。
そして、そのすぐ目の前に立つ巨大な侵食体。
「……間に合うか」
距離。
タイミング。
敵の動き。
すべてを一瞬で計算する。
「……神崎!」
「……分かってる!」
神崎が横へ回る。
注意を引く動き。
侵食体の視線がわずかに逸れる。
「……今だ」
踏み込む。
「……風」
加速。
地面を滑るように距離を詰める。
侵食体が反応する。
「……遅い」
未来視。
攻撃の軌道が見える。
最小動作で避ける。
そのまま、民間人の前へ。
「……立てるか」
声をかける。
「む、無理……足が……」
動けない。
「……なら」
抱える。
「……掴まれ」
その瞬間——
侵食体が腕を振る。
「……来るな」
回避は不可能。
「……土」
即座に地面を隆起。
——ガンッ!!
直撃を防ぐ。
だが——
「……持たねぇな」
壁が崩れる。
「……神崎!」
「任せろ!」
神崎が横から突っ込む。
——ドンッ!!
侵食体の動きが止まる。
「……助かった」
距離を取る。
安全圏まで移動。
「……そこにいろ」
民間人を下ろす。
「すぐ終わらせる」
振り返る。
侵食体。
サイズが違う。
再生も速い。
「……核、どこだ」
詳細鑑定。
【大型侵食体】
Lv900
・特性:多核構造
・再生速度:高速
・弱点:全核破壊
「……面倒だな」
神崎が距離を取る。
「どうする?」
「……同時に潰す」
「……できるのか?」
「……やるしかねぇだろ」
踏み込む。
侵食体が複数の腕を伸ばす。
「……全部見えてる」
未来視。
回避。
回避。
回避。
「……今だ」
内部。
複数の核。
「……まとめていく」
「……水」
流す。
「……土」
固定。
「……風」
切り裂く。
「……火」
焼く。
「……終わりだ」
連続で突き込む。
——グシャッグシャッグシャッ!!
核が一つずつ砕ける。
だが——
「……まだか!」
最後の核。
深い位置。
「……届かねぇな」
その瞬間。
「……在真!」
神崎が飛び込む。
「……押し込め!」
侵食体の動きを止める。
「……今だ!」
踏み込む。
全力。
「——貫け!」
最後の核へ。
——バキィッ!!
砕ける。
侵食体が崩壊する。
静寂。
「……はぁ……」
息を整える。
振り返る。
民間人。
「……大丈夫か」
「……た、助かった……」
震えているが、生きている。
「……よかったな」
神崎が隣に来る。
「……いい動きだった」
「……そっちもな」
軽く返す。
その時。
奥。
さらに強い気配。
「……まだいるな」
神崎も気づく。
「……ああ」
侵食型ダンジョン。
「……これ、本体があるな」
ただの群れじゃない。
「……行くぞ」




