第33話「階級」
模擬戦のあと、空気は完全に変わっていた。
さっきまでの警戒は消え、代わりに視線の意味が変わる。
「……見られてるな」
好奇。
警戒。
そして——評価。
「そりゃな」
隣に立つ神崎が肩をすくめる。
「ここにいる連中の中で、お前とやり合えるやつはほとんどいない」
「……そんなもんか」
「そんなもんだ」
軽く言うが、その重みは理解できる。
「……で」
歩きながら聞く。
「覚醒者って、どういう扱いなんだ?」
「簡単に言えば戦力だな」
「軍直属、民間協力、完全フリー」
「大きくはその三つに分かれる」
「……俺はフリーだな」
「今はな」
神崎が少しだけ笑う。
「ただ、そのまま放置されるレベルじゃない」
「……だろうな」
理解している。
「階級もある」
神崎が指を立てる。
「下から順に——」
「E、D、C、B、A」
「そして——S」
「……分かりやすいな」
「で、お前は」
一瞬、間が空く。
「……A以上」
「……以上ってなんだ」
「Sはまだ少ない」
「正式に認定されてるのは数人だけだ」
「……じゃあ俺は?」
「……暫定Sクラス」
「……へぇ」
驚きはない。
「ただし」
神崎が続ける。
「評価はこれからだ」
「……実績か」
「そういうことだ」
建物の中へ入る。
会議室のような場所。
中には数人。
明らかに上層部。
「連れてきました」
神崎が言う。
視線が集まる。
「……大月 在真」
一人が口を開く。
「今回の戦闘、すべて確認している」
「……そうか」
隠す必要はない。
「単刀直入に聞く」
空気が引き締まる。
「我々に協力する意思はあるか?」
「……条件次第だな」
即答。
「……聞こう」
「拘束なし」
「行動の自由」
「情報の共有」
シンプルに。
沈黙。
「……いいだろう」
あっさりと通る。
「……意外だな」
「お前を無理に縛る方がリスクが高い」
合理的判断。
「……助かる」
その時。
別の資料が出される。
「もう一つ、話がある」
「……なんだ?」
「新規ダンジョンだ」
地図が表示される。
「都市部に発生」
「すでに被害が出ている」
「……どれくらいだ?」
「中層クラス以上」
「……なるほどな」
つまり——
「……戦力不足か」
「そうだ」
視線がこちらに向く。
「お前の力が必要だ」
少しだけ考える。
「……報酬は?」
「DP、情報、優先権」
「……悪くない」
立ち上がる。
「……行くか」
神崎が笑う。
「……決まりだな」
新しい任務。
新しい戦場。
「……都市か」
今までとは違う。
「……面白いな」
その一歩が——
ダンジョンの外での戦いへと繋がる。
「……行くぞ」




