第32話「模擬戦」
神崎と握手した瞬間、周囲の空気がわずかに張り詰めた。
「……いいな、その反応」
神崎が楽しそうに笑う。
「……試したくなる」
「……だろうな」
お互い、分かっている。
「模擬戦、やるか?」
周囲がざわつく。
「ここでか?」
「いや、ちゃんとした場所がある」
神崎が顎で指す。
少し離れた場所。
広い訓練場のようなスペース。
「……行くか」
断る理由はない。
移動する。
周囲に人が集まり始める。
覚醒者。
兵士。
全員が興味を持っている。
「……結構集まるな」
「当たり前だ」
神崎が軽く肩を回す。
「俺とやるやつなんて、ほとんどいないからな」
「……そういうタイプか」
位置につく。
「ルールは?」
「気絶か、戦闘不能で終了」
「……了解」
剣を構える。
神崎は、素手。
「……武器使わないのか?」
「必要ない」
軽く言う。
「……いいな」
その余裕。
「……じゃあ」
神崎が笑う。
「始めるか」
——ドンッ!!
踏み込み。
「……速いな」
未来視。
軌道が見える。
「……右」
回避。
そのまま斬り込む。
——ガキンッ!!
「……止めた?」
素手で受けている。
「……硬いな」
「そっちもな」
神崎が笑う。
距離を取る。
「……ただの殴り合いじゃないな」
「当然だ」
神崎の気配が変わる。
「……行くぞ」
次の瞬間。
消えた。
「……っ!」
未来視。
断片。
「……上か!」
上からの蹴り。
——ドンッ!!
受ける。
だが重い。
「……パワーもあるな」
流す。
距離を取る。
「……今度はこっちだ」
踏み込む。
「……風」
加速。
斬撃。
——シュッ!!
神崎がギリギリで避ける。
「……速いな」
「そっちもな」
笑う。
「……いいな」
空気が変わる。
神崎の目が変わる。
「……本気出すか」
「……来い」
次の瞬間。
圧が変わる。
「……っ」
未来視が追いつかない。
「……見えねぇ」
——ドンッ!!
直撃。
「……ぐっ!」
体が揺れる。
「……今のは効いたか?」
「……少しな」
息を整える。
「……でも」
剣を構える。
「……見えてきた」
完全じゃない。
だが——
「……対応できる」
踏み込む。
「……終わりだ」
連続。
火。
風。
水。
「……重ねる」
神崎の動きが一瞬止まる。
「……そこだ」
首元へ。
——ピタッ。
寸止め。
同時に——
神崎の拳が、顔の前で止まっている。
「……相打ちか」
沈黙。
そして——
「……いいな」
神崎が笑う。
「……久しぶりに楽しかった」
「……こっちもだ」
剣を下ろす。
周囲がざわつく。
「……互角……?」
「いや、今のは……」
評価が変わる。
「……お前、トップクラスだな」
神崎が言う。
「……そうなるな」
否定しない。
「……歓迎する」
手を差し出してくる。
「……覚醒者の世界へ」
握る。
「……よろしく」
ここから——
新しい戦いが始まる。




