第31話「覚醒者」
ヘリに乗り込んだ瞬間、外の空気が一気に遠ざかった。
プロペラ音。
振動。
視界の中で、山が小さくなっていく。
「……こういうの、初めてだな」
向かいに座る兵士たちが、ちらちらとこちらを見る。
警戒。
そして——
好奇。
「……そんなに珍しいか?」
一人が苦笑する。
「珍しいどころじゃない」
「単独であのレベルのモンスターを倒す人間は、まだほとんど確認されてない」
「……そうなのか」
思ったより遅れている。
「……外の状況は?」
問いかける。
「……覚醒者は確認されている」
「だが、数は少ない」
「そして——」
一瞬、間が空く。
「……レベル差が激しい」
「……まあ、だろうな」
自分の状況を考えれば当然だ。
「……覚醒者ってのは?」
改めて聞く。
「ダンジョンに適応した人間の総称だ」
「ステータスを持ち、スキルを使える」
「……やっぱりな」
ほぼ想像通り。
「……お前は、その中でも異常だ」
視線が集まる。
「……そう見えるか?」
「見える」
即答。
「今確認されている中で、その戦闘レベルは上位……いや、トップクラスだ」
「……へぇ」
驚きはない。
「……ただし」
空気が少し変わる。
「強すぎる力は、管理対象になる」
「……だろうな」
想定内。
「……逃げる気はないのか?」
「ないな」
即答。
「……理由は?」
「……無駄が多い」
一瞬、沈黙。
そして——
小さく笑いが漏れる。
「……正直だな」
「……あと」
少しだけ視線を外す。
「情報が欲しい」
それが本音だ。
「……いい判断だ」
ヘリが高度を下げ始める。
「……もうすぐ着く」
視線を外へ。
広がるのは——
巨大な施設。
壁。
監視塔。
武装車両。
「……基地か」
「臨時の対ダンジョン拠点だ」
ヘリが着陸する。
扉が開く。
外へ出る。
「……結構人いるな」
視線。
人。
覚醒者らしき存在もいる。
だが——
「……弱いな」
感覚的にわかる。
「……お前、やっぱり異常だな」
横の兵士が苦笑する。
その時。
別の気配。
「……?」
正面から歩いてくる人物。
軍とは違う。
装備も、雰囲気も。
「……あいつは?」
「……覚醒者だ」
「それも——上位」
視線が合う。
その瞬間。
「……なるほどな」
相手も気づいている。
「……お前、強いな」
「……そっちもな」
短いやり取り。
空気が変わる。
周囲がざわつく。
「……面白いのが来たな」
相手が笑う。
「……名前は?」
「大月 在真」
「……俺は、神崎」
手を差し出してくる。
「……よろしく」
握る。
その瞬間。
わずかに力が込められる。
「……試してるな」
同じように返す。
「……いいな」
神崎が笑う。
「……久しぶりだ、このレベルは」
空気が変わる。
「……ここ、退屈しなさそうだな」
そう呟く。
新しい環境。
新しい強者。
そして——
「……次は、人間か」
戦いの舞台が、変わる。




