第28話「外の世界」
ダンジョンを出た瞬間、空気が変わった。
重さがない。
あの独特の圧が消えている。
「……外か」
山の空気。
風の音。
木々の揺れ。
「……普通だな」
だが、その“普通”が妙に違和感を持って迫ってくる。
ポケットからスマホを取り出す。
画面を開く。
通知。
ニュース。
動画。
すべてが——
「……ダンジョンだらけか」
『国内各地でダンジョン拡大』
『覚醒者、戦闘能力の格差問題』
『民間人の侵入禁止区域拡大』
「……もう前の世界じゃないな」
スクロールする。
動画。
戦闘映像。
だが——
「……遅いな」
動き。
判断。
すべてが遅く見える。
「……これが、差か」
今の自分と、外の人間。
「……かなり開いてるな」
その時。
——ブオォォォン。
上空。
ヘリの音。
「……来たか」
視線を上げる。
黒い機体。
明らかに軍用。
こちらへ向かってくる。
「……見つかったな」
ガルが低く唸る。
「……大丈夫だ」
だが——
「……どうするかだな」
逃げるか。
接触するか。
少し考える。
「……いや」
答えは決まっていた。
「……行くか」
隠れ続けるより、情報を取る。
その方が早い。
ヘリが近づく。
風が吹き荒れる。
着地。
扉が開く。
中から出てきたのは——
武装した人間。
銃。
装備。
完全な戦闘態勢。
「……一般人じゃないな」
その中の一人が前に出る。
「動くな!」
銃口が向けられる。
「その場で両手を上げろ!」
「……」
少しだけ考える。
「敵対する気はないんだけどな」
まあ、向こうから見れば不審者だ。通じるはずもない。
「……しゃーない」
ゆっくりと手を上げる。
その瞬間。
別の気配。
「……?」
森の奥。
マップが反応する。
・個体:未知
・危険度:高
「……タイミング悪いな」
次の瞬間——
——ドンッ!!
地面が揺れる。
森の奥から現れたのは——
巨大な影。
「……おいおい」
軍の連中がざわつく。
「なんだあれ……!」
「モンスターだと!?」
「……出たな」
視線を向ける。
それは——
明らかに、今までの個体より強い。
「……ちょうどいい」
銃口。
軍。
未知の敵。
「じゃあ、分かりやすくするか」
剣を握る。
「言葉より先に、実力で」
その一歩が——
世界との“接触”を意味していた。




