第25話「最深部」
上層中央を抜けた先。
マップに表示されていた“最深部”へと続く通路は、これまでとは明らかに違っていた。
静かすぎる。
敵の気配が、一切ない。
「……静かすぎるな」
普通、ボス前ってのはもっと露骨に嫌な気配がある。
なのに、ここは妙に綺麗すぎる。
「……全部、中ボスに集約してたのか?」
ガルも違和感を感じているのか、足を止めて周囲を見ている。
「……いや」
違う。
「……“いない”んじゃない」
「……“排除されてる”」
その感覚は、確信に近かった。
ゆっくりと進む。
やがて、通路が途切れる。
広い空間。
だが、これまでとは違う。
戦闘のための空間ではない。
「……なんだここ」
床は滑らかで、中央に一つの構造物がある。
円形の台座。
その中心に——
“黒い結晶”。
「……ボスじゃない?」
警戒する。
だが、動かない。
詳細鑑定。
【???】
・解析不能
・干渉不可
・状態:待機
「……また解析不能か」
ここに来て、二度目。
「……ただのオブジェクトじゃないな」
近づく。
ガルが唸る。
「……大丈夫だ」
手を伸ばす。
触れる。
——ピシッ。
小さな音。
次の瞬間。
空間が歪む。
「……来る!」
反射的に距離を取る。
結晶が砕ける。
その中から現れたのは——
“人型”。
「……人?」
いや、違う。
鎧。
だが、これまでのスケルトンではない。
黒い。
滑らか。
そして——
「……気配が、違う」
圧。
明らかに、これまでの敵とは次元が違う。
詳細鑑定。
【上層守護者】
Lv1500
・HP:???
・攻撃力:???
・特性:完全戦闘特化/適応進化
・弱点:不明
「適応進化……?」
つまり、殴り合うほど学習されるってことか。
「最悪の相手だな、これ」
最悪の相手。
守護者がゆっくりと顔を上げる。
目が合う。
その瞬間。
「……来る」
消えた。
「……速っ——」
反応が遅れる。
——ガンッ!!
衝撃。
体が吹き飛ぶ。
「……っ!」
壁に叩きつけられる。
呼吸が止まる。
「……レベルが違うな」
立ち上がる。
ガルが前に出る。
「……待て」
止める。
「……これは、無理に突っ込む相手じゃない」
未来視。
だが——
「……読めない」
動きが速すぎる。
未来が追いつかない。
「……厄介だな」
だが、逃げる気はない。
「……一発入れて、様子を見る」
剣を構える。
守護者が動く。
今度は見える。
わずかに。
「……左」
回避。
そのまま踏み込む。
「……当てる!」
斬撃。
——ガキンッ!!
「……硬い!」
通らない。
その瞬間。
守護者の動きが変わる。
「……速くなってる?」
適応。
「……マジかよ」
ガルが飛び込む。
だが——
——ガンッ!!
弾かれる。
「……やばいな」
このまま続ければ、確実に不利になる。
「……一旦引くか?」
だが、その瞬間。
マップが反応する。
・退出不可
・戦闘状態:固定
「……逃げられない?」
守護者が構える。
「……詰み、かけてるな」
それでも——
「いや、まだ終わってない」
剣を握り直す。
「ここで折れるなら、ここまで来てない」
今まで積み上げたもの。
全部使う。
「……ここが壁か」
ガルが隣に並ぶ。
「……やるぞ」




