第21話「分岐」
中層ボスを倒したことで、ダンジョンの構造は明確に変化した。
マップに表示されたのは、これまでになかった“分岐”。
【進行ルート】
・上層ルート(通常進行)
・特殊エリア(条件付開放)
「……どっちも気になるな」
上層は、おそらく正規ルート。
敵はさらに強くなるが、その分報酬も増える。
だが——
「……特殊エリア」
条件付き。
つまり、普通じゃない。
「……こういうのは、大体当たりか地雷だな」
ガルを見る。
静かにこちらを見ている。
「……行くか?」
ガルが小さく鳴く。
否定ではない。
「……よし」
決断。
「……特殊エリアだ」
意識を向ける。
条件表示が一瞬だけ流れ、すぐに「承認」の文字に切り替わった。
「マスター権限……? 初見だけど、今は後回しだな」
光が広がる。
次の瞬間。
視界が切り替わる。
「……ここは」
これまでのダンジョンとは、明らかに違う空間。
白い。
床も、壁も、天井も。
人工的な空間。
「……ダンジョンっぽくないな」
静かすぎる。
敵の気配がない。
その代わり——
中央に、一つの台座。
「……なんだ、これ」
近づく。
台座の上に、透明な球体。
淡く光っている。
触れる。
——ピッ。
音が鳴る。
【試練開始】
「……は?」
その瞬間。
空間が歪む。
目の前に現れたのは——
“自分”。
「……俺?」
同じ姿。
同じ装備。
同じ気配。
【模倣体】
・対象:大月 在真
・再現率:80%
「……コピーかよ」
ガルが唸る。
だが——
「……動くな」
止める。
「ここで頼ったら、次も同じところで詰まる。これは俺の戦いだ」
模倣体が構える。
同じ構え。
「……厄介だな」
未来視鑑定を発動。
だが——
「……見えない?」
未来が、ぼやける。
完全には読めない。
「……同じ能力か」
つまり——
「……完全に、対等ってことだな」
模倣体が動く。
同時に、自分も動く。
剣が交差する。
——ガキンッ!!
「……やっぱ同じか」
力も。
速度も。
タイミングも。
「……でも」
後ろに下がる。
「……違う部分はある」
模倣体は、“再現”。
だが、自分は“本体”。
「……経験の差だ」
呼吸を整える。
わずかな違い。
クセ。
間。
「……そこを突く」
模倣体が再び踏み込む。
未来視。
完全ではない。
だが、断片は見える。
「……右から来る」
回避。
その瞬間。
「……一拍、遅い」
踏み込む。
首元へ。
だが——
模倣体も同じ動き。
「……やっぱり来るか」
剣がぶつかる。
——ガンッ!!
距離が離れる。
「……なら」
選択を変える。
「……読みじゃない」
「……崩す」
四大属性。
同時に使う。
「……火」
「……風」
炎と風を重ねる。
——ボォォッ!!
一気に圧をかける。
模倣体が対応する。
だが——
「……処理が遅い」
再現は完璧じゃない。
複合には弱い。
「……終わりだ」
踏み込む。
全力。
「——斬る!」
首元へ、叩き込む。
——バキィッ!!
模倣体が崩れる。
消滅。
静寂。
「……はぁ……」
ウィンドウが開く。
【試練クリア】
【報酬】
・戦闘補正(常時)
・未来視精度向上
・模倣耐性獲得
「……強化か」
体が軽くなる。
感覚が鋭くなる。
「……いいな」
振り返る。
「……これが、特殊エリアか」
ただの強敵じゃない。
“成長させる場所”。
「……面白い」
ガルが隣に来る。
「……次は上層だな」




