第11話「最適解」
翌朝、起きてすぐにマップを開いた。
やはり消えていない。入口周辺は低密度。少し奥に群生エリア。その先が中層。さらに奥はまだ曖昧だが、危険度が跳ね上がっている。
線で見えるぶん、逆に嫌だった。
昨日までは何がいるか分からなかった。
今は、嫌なものがちゃんとそこにあると分かる。
「……便利だな」
昨日とは違う。
見えないものが全部見えるわけじゃない。
それでも、何もないよりずっとましだった。
ダンジョンへ入ると、空気の重さは相変わらずだった。
でも、昨日ほど喉は乾かない。怖くないわけじゃない。ただ、怖さの種類が変わった。
「怖くないわけじゃないけどな」
昨日みたいに何も分からないままじゃない。
最初のスケルトンを見つける。
詳細鑑定を重ねると、弱点も行動傾向もはっきり見えた。振り下ろしの癖。足の運び。首の脆さ。見えてしまえば、昨日までよりだいぶ戦いやすい。
見えるようになった、というより、隠れていたものを勝手に剥がされる感じに近い。
便利なのに、少し気味が悪い。
ガルが腕を止め、俺が首を断つ。
一体。
二体。
三体。
同じ流れで無駄なく落としていく。
「噛み合うな」
楽、というより噛み合う。
余計な読み違いが減ったぶん、手が勝手に次へ行く。
その速さに少しだけ、自分でも置いていかれそうになる。
レベルも武器も順調に上がる。
そのまま群生エリアへ踏み込む。今度は六体。数だけなら厄介だが、役割を分ければ崩せる。
「ガル、左」
俺は右。
振り下ろし、横薙ぎ、突進気味の踏み込み。見えているなら処理できる。右側を片付けてから左へ合流し、最後の一体を挟み込んで落とす。
「回るな」
群れの中でも、頭が回っている感覚があった。焦っていない。余計な力も入っていない。まだ余裕と呼べるほどではないが、少なくとも前みたいに足が止まることはなかった。
そう思った瞬間、マップの表示が変わる。
・特定個体:接近中
「……来たか」
重い足音。スケルトンナイトが姿を現す。前と違って、今回は逃げる前提でここにいるわけじゃない。試すためにここまで来た。
それでも、喉の奥は少しだけ固くなる。
前に逃げた相手だ。
見えているからといって、嫌なものは嫌だった。
「試すぞ」
剣を握り直す。
怖さはまだある。でも、それ以上に、今の自分がどこまで通じるのか知りたかった。




