第101話「選択」
『同化/否定』
静寂。
何もない空間。
ただ、“それ”だけが待っている。
「……なるほどな」
ゆっくり息を吐く。
ここまで来た。
「……で」
視線を向ける。
「……それだけか」
“それ”は何も言わない。
肯定も否定もせず、ただ選択を待っている。
「……同化すれば」
すべてを内包する側へ行く。
完全な存在。
もう迷いも衝突もなく、ただ大きなひとつになる道。
「……否定すれば」
今の自分のまま、外に立ち続ける。
だが、それも結局は用意された反対側でしかない。
「……どっちも違うな」
静かに言う。
「……俺は」
一歩、踏み出す。
“それ”へ向かって。
『……選択確認』
「……選ぶ」
剣を構える。
だが、振りかぶることはしない。
「……壊す」
その瞬間、“それ”が初めて揺れた。
『……異常』
初めて、向こう側の静けさにひびが入る。
「……枠ごとだ」
「……いらねぇな」
踏み込む。
「——斬る!」
何もない。
音もない。
衝撃もない。
だが——。
“それ”に、確かにひびが入った。
『……不可能』
「……可能だ」
もう一度。
迷いなく。
「——斬る!」
——パキン。
小さな音だった。
けれど、それは今まで壊してきたどんな強敵よりも決定的だった。
“それ”が崩れる。
選択。
押しつけられた答え。
同化か否定か。
その二択ごと、音もなく砕けていく。
静寂。
完全な沈黙。
そして——。
世界が戻った。
「……戻ったか」
基地の屋上。
神崎とレオンがいる。
神崎が固まったまま口を開いた。
「……おい。今の、なんだ」
レオンは静かに在真を見る。
「……変わったな」
「……ああ」
短く返す。
だが、次の言葉は自然に出た。
「……変わってねぇ」
視線を空へ向ける。
「……終わりか」
少しだけ考える。
そして——。
「……いや」
小さく笑う。
「……ここからだな」




