第98話「統合」
「……届く」
群を無視して、一直線に踏み込む。
もう迷いはなかった。
中枢。
他より濃く、他より重い場所。
「あれが本体だ」
そう確信した瞬間、“それら”の動きがわずかに止まった。
反応したのだと分かる。
神崎が息を呑む。
「マジかよ……ほんとにいたのか」
レオンの声が鋭くなる。
「……来る。気を抜くな」
中枢が動いた。
それだけで、空間が歪む。
時間の流れが一瞬で崩れ、存在の輪郭が引き伸ばされるような圧が降ってきた。
「……重いな」
「……全部上だ」
だが——。
「……寒いな」
むしろ、ようやく芯に届いた気がした。
踏み込む。
「——斬る!」
——ガキィィンッ!!
激突。
重い。
さっきまでとは比べものにならない。
「……固ぇ」
刃が通らないわけじゃない。
ただ、削るための理屈そのものを押し返される。
「……違うな」
「……これ」
中心でありながら、単独では閉じていない。
「……集合だ」
“それ”が反応する。
『統合存在』
言葉ではない情報が、直接流れ込んだ。
「……だろうな」
笑う。
「……全部一つか」
なら話はさらに単純だ。
「……飲まれなきゃいい」
間を空けず、連続で踏み込む。
——ガキンッ、ガキンッ、ガキンッ!!
重ねる。
何度も。
だが、押し返される。
「……重いな」
斬るたびに、逆にこちらの輪郭が削られるような感覚があった。
受け止めているだけで持っていかれる。
その瞬間、中枢が変形した。
「……来るぞ」
空間が一点へ収束しはじめる。
周囲の“それら”も巻き込んで、中心へ中心へと寄っていく。
「……吸い込まれるな」
神崎が怒鳴る。
「ふざけんな、飲まれるぞ!」
だが——。
「……好都合だ」
距離が縮まる。
バラけていた外殻が寄るせいで、中心の奥がわずかに見えた。
「……近い」
中枢の奥。
何重にも守られていた場所が、一瞬だけむき出しになる。
「あれだ」
壊すというより、あそこへ自分を通せばいい。
統合に飲まれないまま、一つのままで立つ。
踏み込む。
その直前、統合存在が“崩れた”。
「……は?」
分離。
再び複数へ。
だが、おかしい。
今度は散っていない。
全部が同時に存在し、全部が同時にこちらへ殺到してくる。
「……違うな」
神崎が叫ぶ。
「無理ゲーだろこれ!」
レオンの眉間にも、さすがに険しさが走る。
「……中心を隠すために、全体へ散った。厄介だな」
「……いや」
首を振る。
「……一つだ」
全部同じ流れに乗っている。
全部別物に見せているだけで、やっていることは変わらない。
「……重ねてるだけだ」
「……なら、分ける」
笑う。
「……面倒だな」
剣を構える。




