第99話「全一」
「……簡単だ」
踏み込む。
「……流れは一つだ」
視線を固定する。
重なり。
ズレ。
層。
複数に見えるそれぞれの奥に、同じ芯が通っている。
「……見える」
「……同時に来る」
剣を構える。
深く息を吸う。
「……一回でいい」
その瞬間、統合存在が動いた。
全方向。
同時。
空間が裂け、時間が軋み、存在を削る圧が四方八方から噛みついてくる。
「……来るぞ」
神崎が歯を食いしばる。
レオンも無言で気配を張る。
だが、在真は前へ出た。
「……まとめて来るな」
避けるつもりはない。
「……関係ねぇ」
踏み込む。
足元も空間も曖昧なまま、それでも自分の領域だけははっきりと足場になる。
「……流れごとまとめる」
意識を集中する。
幸運。
領域。
干渉。
ここまで積み上げたものを、もう使い分ける必要はなかった。
「……重ねる」
空間が揺れる。
世界が歪む。
それでも、その歪みの中心で一つだけぶれない点がある。
「……ここだ」
全ての層が重なる一点。
そこへ向けて、迷いなく振り抜く。
「——斬る!」
——バキィィィィィィィッ!!!
完全な衝突だった。
すべてが止まる。
「……入った」
その感触だけが、はっきり残った。
統合存在が“崩れる”。
分離も。
統合も。
さっきまで厄介だった構造そのものが、まとめて裂けていく。
「……これで通る」
静かに言う。
そのまま、すべてが消えた。
完全に。
沈黙。
何も残らない、乾いた静寂だけが広がる。
やがて、ウィンドウが開いた。
【存在階位更新】
【最上位存在認定】
【干渉制限:解除】
【領域支配:完全】
「……上がったな」
軽く呟く。
その瞬間、視界がまた広がる。
世界。
その外。
さらに外。
「……全部見える」
完全に。
遠さも近さも関係なく、境界の向こうがただそこにある。
「……いいな」
少しだけ笑う。
だが、それで終わりじゃない。
さらに上。
「……まだあるな」
今までと違う領域が、静かに口を開いている。
そこには敵意も圧もない。
ただ、最後に残された何かがあると分かるだけだった。
「……最後か」
剣を構える。
ここまで来たなら、見届けるしかない。




