第93話「外界」
『侵入確認』
静寂。
何もない。
だが——。
「……全部あるな」
空間。
時間。
概念。
「……来るぞ」
前方の“それ”。
形はない。
だが、その存在自体が圧になっていた。
神崎が歯を食いしばる。
「……息が重い」
レオンが低く言う。
「……干渉されている」
「……だろうな」
だが——。
「……関係ねぇ」
踏み込む。
その瞬間。
——消える。
「……っ?」
視界が飛ぶ。
存在が抜ける。
自分という形が、一瞬だけ抜き取られたみたいな感覚だった。
「……消されたか」
だが、すぐに戻る。
「……戻る」
意識を固定する。
自分が自分である一点へ、無理やり噛みつく。
次の瞬間、復帰。
「……効くな」
「……でも、消えねぇ」
“それ”がわずかに反応する。
『保持確認』
「……そうだ」
在真は笑う。
「……消えねぇ」
踏み込む。
距離がない。
だが、ここまで来るとそんなことは問題にもならない。
「……邪魔だな」
斬る。
「——斬る!」
——何も起きない。
手応えがない。
「……当たらねぇな」
“それ”が動く。
動きがないのに、確実に来ている。
「……来てる」
回避。
——遅れて衝撃。
さらに、在真の存在の端がわずかに削られた。
「……時間ズレか」
「……削ってくるな」
神崎が叫ぶ。
「これヤバいぞ! お前、輪郭薄れてる!」
レオンが前に出る。
「……触れるな」
「……ああ」
「……触れる」
踏み込む。
時間のズレ。
存在の層。
今見えている理屈全部を、一度に読む。
「……そこだ」
剣を振る。
——ガキンッ。
初めての衝突。
かすかながら、確実に相手へ届いた。
「……触れたな」
“それ”が揺れる。
『干渉確認』
「……だろうな」
笑う。
「……まだいける」
その瞬間、“それ”の気配が変わる。
さらに上。
今までよりも、もっと濃く、もっと深い圧。
「……来るぞ」
「……重いな」
剣を構える。
「……逃がさねぇ」




