ユイの奇策
そこへとやってきた$-Duty隊であるが、まずはユイが相手のアサルトアーマーを見て仰天した。
(北軍にFX100式が!)
そうである。女ウラ部隊の首魁カツラギ曹長の乗るアサルトアーマー、ポカホンタスも、ユイ自身が乗っているアサルトアーマーも、どちらもオガワ重工製、FX100型なのである。違うのは、ユイのファイアーボールが赤色、ポカホンタスが白との、カラーリングの違いのみ。ミューユの普段の愛機スノーホワイトは世界にひとつの一点ものであるが、ポカホンタスは指揮官用の高級機ではあるが量産機のため、何機存在していたとしても不思議ではないのだ。
「どうして?最新鋭機FX100とは、あまりにも生意気でしてよ、反乱軍のくせに!」
ユイは精一杯の憎まれ口を叩くと、猛然とカツラギ曹長のアサルトアーマーへと突っ込んでいった。
「おっと待ちな、こいつが死んでもいいのか!」
通信回線を開いたカツラギ曹長は、サザンウインドに銃口を向ける。
ユイは通信回線をサザンウインドに切り替える。
「ほう、それは面白いことでしてね。フジイさん、あなた私達に命を助けて欲しくて?それなら、いくら出せまして?」
「金取るのかよ!」
「こちらも商売でしてよ?おいくら出すおつもりで?」
「……500万JP$。俺らの依頼料だ。それを全部やるよ」
ユイは通信回線をさらに切り替えて、
「よろしくてよ。アイリング、ナパーム弾の準備はできて?」
「え!今は敵も味方も入り乱れとるし、アサルトアーマーにナパーム弾は効かへんで?」
「ナパーム弾でよろしくてよ。ありったけ撃って!」
「お、おう」
アイリングの乗機、イエローコングはナパームを全弾放つ。
たちまちあたり一面はパッと炎に包まれた。
「確かにナパーム弾にはアサルトアーマーを焼くほどの火力はなくてよ」
「でも」
「ナパーム弾への対処は、兵の練度の差が大きく出ましてよ!」
ユイの言った通りであった。ピーチボーイズ、女ウラ部隊は乱戦であったが、どちらも火の海からすぐに離脱しようとして、戦闘どころではなくなっていた。結果、炎の中で戦闘を続行できるのは熟練者であるカツラギ曹長と、$-Duty隊のユイとアイリングのみとなった。
「こらお前ら!ナパームではアサルトアーマーは焼けん!逃げるな!戦え!」
カツラギ曹長が外部スピーカーでがなり立てるも、女ウラ部隊もピーチボーイズも、自分の機体が火だるまになるのを見たら散り散りとなった。
「もう人質ひとりでどうとなる状況ではなくなりましてね?」
「なら蹴散らすまでよ!」
半壊のサザンウインドを放り出し、狂ったようにライフルを乱射して、猛然と襲いかかるカツラギ曹長のポカホンタス。しかしイエローコングは冷静に前に進み出て、コクピットにお得意のハンマーパンチをカウンターで繰り出した。
「ぐおっ!」
カツラギ曹長のポカホンタスは、いきなりコクピットが歪むほどの衝撃を受け、カツラギ曹長のシートにまで衝撃が走った。
すかさずダメージを受けたポカホンタスに、ファイアーボールはマシンガンを浴びせる。アイリングとユイ、二対一で距離をつめていく。
「これしきでポカホンタスはやられん!」
「ならこれはどうでして?」
ユイのファイアーボールはポカホンタスの死角から、マシンガンをポカホンタスのライフルに向けて集中連射する。たちまちポカホンタスのライフルは爆発四散した。
この間イエローコングとファイアーボールは常にポカホンタスに対して二対一で周囲をぐるぐると回り、プレッシャーをかけてくる。
常に二対一の構えを崩さないのは、セオリーに忠実なユイの戦法である。
「オホホホホ、FX100の扱いならば私の方がうわてでしてよ!」
「くそっ!」
カツラギ曹長のポカホンタスは、もはやこれまでと一目散に退却を始めた。その頃にはピーチボーイズも女ウラ部隊も、散り散りになっていった。
囮部隊との戦闘はユイチーム一応の勝利であった。




