ウラ部隊の裏事情
女ウラ部隊決起予定日の一週間前。
「そう言う訳で、今回の警備には両チームをお願いした訳です。何卒よろしくお願いします」
ナカショー村役場の会議室で、老齢の村長はミキ達警備チームに深く礼をした。
「女ウラ部隊だなんて俺ら『ピーチボーイズ』だけで片付けてやるよ!」
自信たっぷりの若く細身な男はフジイ。ナカショー方面を守る防衛隊の雇う傭兵グループのリーダーであった。
「それに」
「ウラ部隊の鎮圧は、俺たちのケジメでもある」
「そりゃどねん意味なら?」
ミキが尋ねると、
「俺らもウラ部隊だったからさ」
その言葉を聞いた瞬間、$-Duty隊の五人はサッと飛び退き身構える。マイカは既にホルスターのコルトM1911に手がかかっている。
「なんだお前ら!まあ待てちょっと待て!人の話は最後まで聞け!」
フジイがたしなめる。
「もともとウラ部隊というのは、この戦争が始まった頃、地元の地主や有力者が自分たちの命や財産を守るためにポケットマネーを出して雇った自警団のことなんだよ」
「じゃったらウラ部隊いうなあ、他にもまだおるんか?」
ミキが問いただす。
「そうだよ。元々オキャーマの南部には、あちこちにウラ部隊が居て、ほとんどみんな真面目に地元の治安を守るために頑張ってた」
「ところが」
フジイは続ける。
「ナカショー方面の部隊が、『ウラ部隊』の名前を全面に出して、自分らの雇い主を始末して、地元で悪さを始め出した。それがオキャーマ中で有名になってしまったので、俺らも段々『ウラ部隊』を名乗りにくくなって、しまいには雇い主からも疑われて仕事を首になって、散々苦労する羽目になった」
「なるほどのう」
ミキはフジイの眼を見据える。どうも嘘をついているのでは無さそうだ。
「それがここへ来て、女ウラ部隊だとか作られて武装蜂起されたんじゃ、俺らは全く舐められどおしだ!何としてでも、武装蜂起は阻止する。お姐さん方も、ここは俺らを黙って観て置いて欲しい」
「そうなんじゃな」
ミキはポツリ呟くと、
「おえ、ユイ、ワイらあの今回の契約書は今ここで見られんかのう?」
「ええ、契約書の写しはこの場ですぐに見られましてよ!」
とユイはすぐに手持ちのタブレットを取り出して操作すると、画面には今回の契約書の写しが表示された。
ミキは画面の契約書をざっとスクロールして全体を眺めると、フジイに画面を向けて指さした。
「ここ見てみいや、ワイらあの条件は『女ウラ部隊の武装蜂起鎮圧』とあるが、前金と成功報酬の他には出来高払いの条項はどこにも無え。つまりゃあ、あんたらあだけで女ウラ部隊が鎮圧されさえすりゃあ、ワイらあは指一本動かさんでもカネが貰えるんじゃ。あんたらあがどうしてもケジメをつける為にこの仕事がやりてえ、言うんじゃったらワイらあは見とるだけにしちゃってもええで?」
「ミキさん、それは流石に……」
側で聞いていた村長が困惑の表情を浮かべると、
「まあこのなんたらボーイズだけで敵が鎮圧出来たら、それに越したこたあねえじゃろ?男を張るやこう、今時かっこええ人らあじゃねえの?ワイらあ惚れるでえ」
とミキはさも噛み締めるかのように言い放ち、同時にマイカの方を見やると、パチリと大きめなウインクをした。するとマイカは顎をこくんと下げて頷く。
「すまん、恩に着る」
フジイはミキに軽く頭を下げた。
するとマイカは急に上目遣いな目線でフジイの側へスッと近づく。
「フジイ様、でしたよね?ケジメをつける為に闘う男の人って、すごくかっこいいです!私たち女所帯のチームで、まだ経験も浅いので、是非とも百戦錬磨の皆さんのこと勉強させて下さい!」
どうしたのであろうか?マイカは普段のキャラとは打って変わってのぶりっ子ぶりを見せつけている。
「え?そう?それならちょっとだけ、俺らピーチボーイスのアサルトアーマー見に来るか?」
「ええ!喜んで!」
フジイとマイカはいそいそと外に止めてあるピーチボーイズのアサルトアーマーを見に行った。
「すごい!アサルトアーマーが何機あるのかしら?ひい、ふう、みい」
マイカがパッと明るい顔で目を輝かせているとフジイは、
「全部で20機かな。大半はオガワ重工の50式だが、俺の『サザンウインド』を含む5機は、トヨダ社製の92式を入れてる」
「すごいすごい!ねえ、フジイさんの「サザンウインド」、ちょっとコクピット見せてもらってもいいですか?」
「もちろん、いいぜ」
パイロットの乗り降りの為に立膝をついて、コクピットから簡易なタラップのでたサザンウインドへ、フジイが先に乗り込み、後からマイカがいかにも恐る恐るといった体で手を引かれて入って行った。
「まあ、こんなところにライフルが立て掛けてある!なんていう銃なんですか?」
「分かるかい?M4カービンだよ、隣にはグロックもあるぜ」
「さすがですね!」
マイカはいかにも興味しんしんといった様子でコクピットをしげしげと見渡した。
「それで、『ピーチボーイズ』って、総勢何人くらいの部隊なんですか?」
「アサルトアーマーに乗るのは20人かな、あとメカニックやバックアップに10人、歩兵20人、総勢50人の部隊さ」
フジイはさも得意げに、ピーチボーイズの部隊の情報をチャラチャラとマイカに話し続けた。
小一時間後、マイカは$-Duty隊の集合場所へと戻ってきた。
「あらイチノセさん、あなたってばよっぽど発展家のご様子ね?なにもこんなときまで男にうつつを抜かさなくてもよろしくってよ?」
ユイが早速マイカにイヤミを浴びせる。
「何言ってやがんだこのクソバカが!」
二人のやりとりにミキが割って入る。
「まあまあ、せえでマイカ、ピーチボーイズの様子はどねえじゃったんなあ?」
「あいつら、アサルトアーマー20機、メカニック10人、歩兵20人だとさ。武装はうちらよりいいもの持ってるが、女ウラ部隊の歩兵150人のことは何も考えてねえみたいだったぜ。アサルトアーマー戦で勝てても、あとの残存兵力の無力化は無理と見た」
「やっぱり、ワイらあが出ていかなんだらおえん、いうことか」
「ミキさん、イチノセさんはピーチボーイズをスパイしてらしたんですのね?」
「今更分かったのかよ!」
「ユイ、分かったんじゃったら早う、女ウラ部隊歩兵150人をどうするか作戦を立ててくれえや」
「はい、私たちは総勢5人、相手は約150人、敵がどう出てくるかにもよりましてよ。敵が数を頼んでゲリラ戦に持ち込むか、あるいは150人を『人間の盾』として人質に使うか、最悪のことも想定しておかねばなりません、よろしくて?」
「せえで?」
「最悪、敵が全員武装してゲリラ戦となることを想定して、クラスターボムとナパーム弾をイエローコングに装備させます。それと拳銃弾が撃てる爆薬付き対人AIドローンを10機。アサルトアーマー各機の対物バルカンの弾数を二倍にします」
「ワイらあの動きは?」
「敵は陽動作戦に出るでしょう。私とアイリングは敵の囮と交戦、ミキさん、アサカ、マイカでその隙に敵の反対側へ回り込み、本隊を叩きます。」
「なんや、誰も彼も皆殺しにする勢いやなあ」
アサカが呟くと、
「最悪そうなります、それとも、こちらが玉砕する方がよろしくて?」
「んな恐ろしこと、言わんといてや、まあるう収めようて!」
「それじゃ、早速追加装備の発注しましてよ!」
「でも、クラスターボムやナパームは別で、AIドローンやこうすぐすぐ手に入るんか?」
ミキが口を挟むと、
「安心しな、AIドローンは俺が趣味で作って持ってるキットがいくつもある、ちょっと改造したら10機なんてすぐ用立てられるぜ!」
マイカはニヤリと笑う。
「ウチらも、一旦出直しやな。装備変更で忙しゅうなるで!」
というわけで、$-Duty隊はアサルトアーマーを一度引き上げ、一旦出直すことにした。




