幾度目かの停戦
ミキがS機関本部に着いた頃には、もう他のメンバーは全て揃っていた。
「ミキさん、二分の遅刻よ。キャップなんだからもう少し自覚を持ってちょうだい」
マダムKの冷たい声が響く。
「すんません」
ミキは軽く頭を下げて、メンバーの列に並んだ。
「あなたたちに招集をかけたのは、ほかでもありません。オキャーマ北軍と南軍との間に、九十日間の停戦が執り行われることを察知したからです」
「停戦?」
「これから、忙しくなるわよ!」
「マダムK、戦争がストップするのに、なんでワイらあが忙しゅうなるんなら?」
「当然でしょ?こんな停戦なんて、ただのみせかけ。実際はお互いが敵地に乗り込んで、スパイ合戦になるからよ!」
「それに、このフライヤーを見なさい」
マダムKは一枚のフライヤーを見せた。そこには
「ヅヤマアイドルフェス」
の楽しそうな字が踊っていた。
「このアイドルフェス、もしかしてワイらあが出るんか?」
「あなたたちはこのヅヤマアイドルフェスに出て囮となり、S機関のエージェントが北軍をスパイするのを援護するのが今回の任務よ」
「ウソお!]
同様の困惑は、ザグラブのメンバーたちにも広がっていた。
ナカギリ特務少将が「ヅヤマアイドルフェス」のフライヤーを見せると、ザグラブ七神将からはブーイングの嵐であった。
「私たち、アイドルなんかじゃありません!」
「そうです!こんなチャラチャラしたイベントなんて!」
「んん~?」
ナカギリ特務少将は唇を尖らす。
「君たち、ザグラブ加入の時には、戦闘訓練と一緒にダンスやボーカルのレッスンもやったよね?」
「確かにやりましたけど、こんなアイドルみたいな真似なんて!」
「あのねえ、君たちザグラブ七神将は、選ばれた人間なの。戦闘の腕を磨くことも確かにそれはそれで必要だからやらせてるけど、本来ならこういう歌やダンスで才能を発揮して、優れた男性をゲットして、顔も良ければ運動神経もいい、優れた子どもをたくさん産ませるのが第一の目的なの。そうやって北部連合の国を栄えさせるのが本来の使命なの!」
「本来の、使命?」
「確かに、君たちがアサルトアーマーを操縦したり、軍事作戦に参加したりする経験は必要性があるからやっている。だが、君たちの本来の使命は、選ばれし者としてこれからの人類のお手本になってもらうことなんだ。君たちがアサルトアーマーに乗ることも、人前で歌を唄うことも、どちらも等しく大事なことなんだよ」
「それに」
ナカギリ特務少将は続ける。
「君たちザグラブ七神将にアイドル的な人気が広まれば、北部連合全体の士気が上がる。士気が上がり北軍が頑張れば戦争も北軍有利に終わらせることができる。君たちは全方面から期待をかけられているんだよ」
「わかりました」
マオ・ナカジマ大尉はこくりとうなづくと、他のメンバーも押し黙った。




