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傭兵部隊$-Duty第二部  作者: 蒼井 電
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第1話「チャンスの女神様」

ご当地アイドル、$-Duty


ここで少し時計の針を戻してみる。

オキャーマ南西部、グラシキシティのショッピングモールでは、今まさにご当地アイドルのライブ中であった。

「あなたに届けたい あなたに伝えたい チャンスの女神様には 前髪しかないって!」

揃いのタータンチェックのワンピースに真っ黒なジャケットを羽織り、黒いかかとつきのブーツを履いたそのグループは、アイドルにしては若干大人びた印象を受ける。その「チャンスの女神様」という持ち歌を歌うアイドルグループこそ、この物語の主役達である$-Dutyの面々であった。


ライブを終えた彼女達は足早に会場手前のテーブルに陣取ると、後頭部に黒い大きなリボンをつけたリーダーらしき娘が

「$-Dutyこれから物販を始めます!」

と声を上げ、それと共に観客だったファン達が机の前へとぞろぞろ並んできた。

「ミキねえ、今日のライブも良かったよ!」

脂ぎった顔のでっぷり太った中年男が声を掛けると、ミキねえと呼ばれた娘は

「カタジマさん、今日もありがとう!」

と嫌な顔一つ見せずに、中年男の手を力強く握り締めた。

ミキと呼ばれた娘が先頭に立ってファンサービスをすると、物販に並ぶファンの行列は次々と消化されていった。


ステージ、物販とも終わり、楽屋では$-Duty隊のメンバーがくつろいでいた。

「はあ……ワイらあも初ステージからもう二ヶ月か……。ぼっこうパッとせんのう……」

ミキと呼ばれた、このグループのリーダーらしい、後頭部に大きな黒いリボンを付けた茶色い髪の娘がボゾりと呟いた。彼女は普段はオキャーマ訛りがかなり激しいようである。

「あら、まだ二ヶ月くらいじゃあ、何も結果は出ませんことよ!弱音だなんて、ミキさんらしくもありませんわ!」

 長い黒髪の、お嬢様言葉の美少女がミキをたしなめる。

「ユイはどっからそねえな自信が湧いて来るんかのう、羨ましいわ」

「ミキさんたら、そんなに気になるんだったら、メンバーみんなに聞いて回ったらよろしくて?イチノセさん、あなたはどう思ってかしら?」

「俺は自分の好きな歌が歌えて、満足してるぜ?こんなチャンスを与えてくれたミキねえにも感謝してる」

 イチノセさんと呼ばれた、同じく黒髪で小柄な、目に泣きぼくろのある少女もミキの事を励ます。この少女、よく見ると右目は銀色、左目は黒と、左右で瞳の色が違うオッドアイである。

「それじゃあ、アサカは?」

 「アイドルにはストーリー性が必要やから、適当に苦労すんのも必要やで!なあ、アイリング!」

 アサカと呼ばれた、長身で手足のスラリと長い、目の細い八重歯の少女はカンサイ弁で軽く笑う。

「あたしもねーちゃんのマネージャーやったんがミキさんのおかげでアイドルや!感謝してるで」

 アイリングと呼ばれた色の黒いギョロ目にドレッドヘアーの大柄な少女も微笑む。

 「まあ、おめえらあがみんなよう言うてくれるなあありがてえことじゃあ思うけえど、ワイらあもアイドルするからにゃあ、結果を出さなんだらおえんけえのう……こねえな地味な営業ばあさせとるなあ、悪りいなあ思よんじゃ」

「……そう思うミキねえだからこそ、みんな付いて行こうと思うんだよ!」

ミキへのメンバーたちの言葉は暖かかった。

 するとそこへ、

「はい!あなたたち、お疲れ様!」

と、黒くタイトなドレスに1メートルほどの長いシガレットホルダーを持った、細身で長身の中年女性が入ってきた。

ミキは中年女性を見やると、

「なあ、マダムK、ワイらあこんな調子で泣かず飛ばずでええんかのう?」

とこぼした。

 それを聞いたマダムKと呼ばれた中年女性は、

「それでいいのよ。だってあなたたちのアイドルとしての売り出しには、私たちちっともお金を掛けてないもの!」

と言い放った。

「あなたたちの衣装はネット通販で買った出来合いのもの、歌う歌は売れないミュージシャンに二足三文で作らせたもの、デビューのプロモーションも地元のラジオに出たっきり、あなたたちの売り出しにはほとんど予算を使っていません!」

「そんな!」

「だ・か・ら、あなたたちは『裏の』仕事をやって、自分たちのアイドルとしての売り出し費用を稼がないといけないの!今日は早速、あなたたちの裏仕事に初の依頼が入ってきたのよ!さっさと着替えを済ませて、あとで本部に集合!」

 そう、$-Duty隊は、表稼業ではご当地アイドルをやりながら、裏稼業で傭兵の仕事をするというグループだったのである。


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