プロローグ「我ら$-Duty」
21XX年、パラレルワールドの日本は第三次世界大戦に敗北し、米露両国の占領下に置かれ、JPN合衆国として再スタートすることとなった。
JPN合衆国は旧日本国の権限を分散させるため、かつての都道府県の自治権限を大幅に認めるようになり、かつての市町村は小さな都市国家となり、JPNは小さな都市国家の集まりとなった。それと共に全国各地では地域の独立を巡る紛争が勃発することとなった。
かつての西日本に位置するオキャーマでは、ヅヤマ、ミマサカ、マニワ等の都市国家が軍事国家となり、オキャーマ中央政府に反旗を翻し、「北部連合」としてオキャーマ中央政府に独立戦争を仕掛けるに及んだ。
戦いは十数年の長きに渡り一進一退の攻防を見せ、膠着状態となり、各地で小競り合いがずっと続いた。
そしてここ、南軍のタケベ要塞も、北軍の攻撃によって陥落寸前の所であった……。
タケベの町は、南軍支配下の土地の中でも北軍側に張り出しており、即ちここが南北戦争の最前線であった。従って日夜激戦が繰り広げられていたが、タケベ要塞の司令官シン・タクマ少将の奮戦により、なんとか前線が維持出来ていた。
しかし今回北軍の攻撃はいつになく激しく、南軍側の損耗も激しくなっていった。
「少将、我が軍の損耗率、15パーセントを超えました!」
「援軍は?」
「まだです!」
「アサルトアーマー隊は総員密集隊形を取り、敵機との戦端を最小限にせよ!中央一点突破で戦況を打開する!この攻撃をしのげば敵も退却する!」
「司令官、敵軍が少しづつ距離を取っていきます!」
「持ちこたえたか?」
しかし、このタクマ少将の目論見は見事外れる事となる。
「新たに二機、高熱源反応あり!敵軍のアサルトベースと思われます!」
「アサルトベースが二機も!」
タクマ少将の驚く声が響く。
アサルトベース(突撃拠点)とは、アサルトアーマー同士の戦闘で突破口を開く為に作られた人型をしていない大型の機動兵器のことである。今回出てきたアサルトベースは、四脚歩行であちこちに大砲を積んだ牛のような形状をしている。もちろん兵装もアサルトアーマーの比ではないくらいの重装備で、総攻撃を喰らえば堅固なタケベ要塞と言えども無事では済まない。
「タケベ要塞司令官に次ぐ!」
外部スピーカーから大音量で、北軍アサルトベースのパイロットが声を響かせる。
「当方はアサルトベース二機を保有している。もうじきさらに援軍も来る。当方の降伏勧告に従わない場合、総攻撃を仕掛ける。ただし降伏すれば貴官らの生命は保証する。今から三分間時間を与える。降伏するか戦闘を続行するか早急に応答せよ!」
「うぐ……援軍はまだか!?」
タクマ少将がくぐもった声を発する。タケベ要塞は南軍の最北端の最前線である。もしも降伏してここを明け渡せば、北軍は一気にオキャーマ市街地までなだれ込む。タクマ少将にとっては、タケベ要塞を全滅覚悟で死守する他に選択肢はなかった。
すると前線の方角へ、赤色の大型輸送機が低空飛行で飛んできて、五色のアサルトアーマーを落としていった。
謎のアサルトアーマーは、着地するや否や南軍の通信回線に割り込む。
「待たせたのう!援軍じゃ!」
「援軍……。たったの5機でか?無茶な!」
「ワイらあの獲物はあのデカブツ2機じゃ。一体500万JP$の賞金がかかっとるけえのう」
「今回もきっちり稼がせてもらうわ!」
「司令官殿、我々が来たからにはもう大丈夫でしてよ!」
「たった5機って、俺たちも安く見られたもんだな!」
「今から作戦を説明します。アイリングがミサイルで弾幕を張るうちにミキさんとアサカはそれぞれ敵アサルトベース攻略を、私とマイカはその援護に当たります」
「分かってるよ、いつも通りじゃねーか!」
「作戦担当は私よ、邪魔しないでくださる!」
「ウッセーな、早くオルチャンジャマー掛けろよ」
「それでは今から10秒後に、オールチャンネルジャマーを掛けます。総員、作戦手順通り動くこと!よろしくて!」
「了解!」
言うが早いか謎の色とりどりなアサルトアーマー5機は散り散りになった。
その後、北軍、南軍の双方が計器類の異常に気付いた。
今まで反応していたレーダーが全く反応しないばかりか、無線機をどの周波数帯に合わせてもノイズばかりで何も聞こえて来ない。センサー類が稼働しないので、戦闘は有視界に限られてしまう。そうこうしているうちに、北軍のアサルトアーマーへはどこからともなくミサイルの雨あられが飛んできた。
「敵襲!」
その声は無線に乗ることもなく、謎のアサルトアーマーは北軍の軍勢を次々と蹴散らしていった。
通常の電子戦では、自軍の周波数帯は生かしておいて、敵の使っている周波数帯に対して妨害電波を流して、敵の機械を使えないようにする。裏を返せば、あらかじめ敵の使用する周波数帯を察知しておく必要があるし、自分たちが使う周波数帯は何としてでも生かしておく必要がある。
しかし彼らの戦法、オールチャンネルジャマー、通称「オルチャンジャマー」は、全部の周波数帯に対して妨害電波を流すので、全てのレーダーが使えなくなり、アサルトアーマーの動作は全てマニュアルに頼るしか無くなる。相手はおろか自分たちさえも自滅覚悟の思い切った戦法である。
そうこうしている間に、青色と緑色のアサルトアーマーが飛び出して来て、それぞれ一体ずつアサルトベースの下へ潜り込もうとする。青色のアサルトアーマーにはピンク色のアサルトアーマー、緑色のアサルトアーマーには赤色のアサルトアーマーがそれぞれ護衛につき、敵機を寄せ付けない。
やがて北軍のアサルトベース乗員は、ガツン!と言う衝撃に気がつく。謎のアサルトアーマーが自分の足元に入り、攻撃を仕掛けてその脚を折りにかかっているのだ。
アサルトベース内部は俄かに混乱に包まれた。
「足元に潜り込まれたぞ!下部バルカンで蹴ちらせ!」
「ダメです、マニュアル操作だと脚に当たります!」
「バルカンの操作をこちらに回せ!わしがやる!」
青色のアサルトアーマーは足元でライフルのゼロ距離射撃を続け、緑色のアサルトアーマーは独特な形のロッドで敵アサルトベースの脚を叩き折りながら、敵のバルカン砲を縫うように駆け抜けていく。そして案の定、アサルトベースの下部バルカンは自分の脚を直撃してしまった。
「あんごうが、マニュアル照準やこうで当たるもんか!」
「ええい、ならば踏み潰せ!」
「ダメです、そんなことをしたらバランスを崩して転倒します!」
北軍のアサルトベースは四足歩行で安定性は良いが、縦二本にしろ横二本にしろ、平行に並んだ脚二本を同時に折られてしまうとバランスを失いたちまち転倒してしまう。
みるみるうちに二機のアサルトベースはめりめりと音を立てて倒れ込んで行った。
かくして北軍のアサルトベースを主体にした攻撃部隊は、謎のアサルトアーマーたった5機に壊滅的なダメージを与えられ、敗走する羽目になった。
敵が敗走して、オルチャンジャマーの効力が無くなったところで、タケベ要塞から謎のアサルトアーマーに通信があった。
「こちらタケベ要塞司令官、シン・タクマ少将である。貴官らの活躍に敬意を表する。ついては貴官らの官姓名を回答願う!」
「我々は傭兵部隊。傭兵部隊、$-Duty!」




