変態おじさんとの出会い
「ミキさん、なにもこんなところにまで偵察に来んでもええやんか?」
アサカが不満をこぼすと、
「いやいや、この前の輸送機も、ビッチュー地方から迂回して来た。今のビッチューは南軍北軍入り乱れとる。ちいとでも情報を収集しとかにゃあおえんで」
ジープを運転しているミキが答える。
そう、ミキ、アサカの両名は、ちょうどソージャシティまで北軍勢力の偵察任務でジープに乗ってやって来ていた。
山道へ差し掛かるその手前、一人の長髪髭もじゃの、全裸にソックスの中年男性が道路に飛び出し、手を振っていた。
「おーい!助けてくれー!」
「変態や!」
急ブレーキを踏んだミキであったが、助手席のアサカは腹を抱えて笑っている。
「おっさん、全裸にソックスとはまたマニアックやなあ!」
「助けてくれ!追い剥ぎに遭ったんだ」
「さよか」
アサカはミキに一万JP$の札を渡した。
「ミキさん、これでイトウゴフクでも行って、あのおっさんの服、買うて来てえな」
「アサカ、おめえはどねんするんなら?」
「うちはあのおっさんの相手しとくわ」
「十分気を付けえや?」
「ああ、なんちゃあれへん」
ジープを猛スピードで飛ばすミキを尻目に、アサカはコルトを構えながら、全裸のナカギリ特務少将に向き合った。
「まあその格好はあんまりや、これでも使いいや」
アサカはナカギリ特務少将に、自分の汗拭き用のタオルを放り投げた。
「すまない」
「おっさん、人からなんかしてもうた時には、『ありがとう』やろ?」
「ああ、ありがとう」
ナカギリ特務少将は自らの腰にタオルを巻いたが、この時ほど他人の情けが有り難かったことはないと後に述懐している。
「おっさん、脱北者なんか?」
「ああ、そんなもんだよ。北部連合の領土を抜けたはいいが、運転手が追い剥ぎだったんだ。おかげでこのザマさ」
「おっさんも災難やったな。でも、うちらが来たからには、もう安心やで」
「あんたたち、南軍の正規兵ではないようだが?」
「まあ、うちらはなんていうか…‥『困っている人に力を貸す仕事』やな」
「それは素晴らしい仕事だね」
などというしばしのやり取りのあと、
「アサカ、そのおっさんの服、買うてきたで!」
突っ走ってきたジープからミキの声が響く。
アサカのことが心配だったミキは、早めに買い物を済ませて帰って来たのだった。
ナカギリ特務少将は手早く服を着る。
「おっさん、名前まだ聞いてへんかったな?」
「俺は、ジョー・ナカギリ。お嬢さんは?」
「うちはアサカ・ヤマザキや。ジープに乗ってんのはうちらのリーダー、ミキ・フクダや」
「おっさん、腹も減っとるやろ?」
アサカは自分のバックパックから、戦闘糧食を取り出した。
「こんなもんしかあれへんけど」
「ありがとう」
空腹なナカギリ特務少将の胃袋に、戦闘糧食のクッキーは沁みた。
「ん?なんか、ええ感じやのう?お邪魔虫はここらで退散するで」
ミキは二人の様子を見てニヤリと笑い、ジープを降りてスタスタと帰って行った。




