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蝶は亀の甲羅に止まる
それから数日後、ショットバー「タートルズ」にて。
店のドアが重々しく開いたと思うや、いつもの黒いドレスでマダムKが入って来た。
老店主がおしぼりを出し「ご注文は?」とぶっきらぼうに聞くと。
「そうね、カクテルを頂戴。ウォッカベースの『パピヨン』を」
マダムKのオーダーを聞いた瞬間、店主は表のドアの看板を「closed」にした。
「これはこれは、『パピヨン』自らこんなむさいところへお越しとは、それにしても相変わらずお美しい」
「お世辞は結構よ」
しかし店主はいつになく嬉しそうである。
「いえね、うちの若い者がロンサムジョージの世話になったみたいで」
「いえいえ、この商売、信用第一ですからね。グラシキでこの稼業やるには『パピヨン』は裏切れない」
「あ、なんでも『マイトガイ』、西の方に家族揃って引っ越ししたそうよ。今頃暖かいところで楽隠居かしら」
「そうでしたか……確かに、やめどきでしたなあ」
『パピヨン』ことマダムKは、カクテルを一息に飲み干し、ロンサムジョージに革袋一杯の金貨を差し出した。
「こんなにいただいて、よろしいんで?」
「もちろん。特別ボーナスよ」
ロンサムジョージは、店を出るマダムKに何度も何度もお辞儀をしていた。
つづく




