慈悲か侮辱か?
「俺は三つの理由から、おめーの命を助ける」
「なんだと?」
「ひとつ。おめーは女ウラ部隊の連中を『救出する』と言った。俺らの目的もあいつらを救うことだ。答えが同じなら途中の式が違ってたって関係ねえ。だから俺とおめーはハナから敵じゃねえ」
「はあ?」
「ふたつめ。俺らはカネ次第で自分の親にも銃口を向ける傭兵部隊だ。だから俺らはただでさえ誰から狙われるか分からねえ。おめーらが北軍のなんだかは知らねえが、無闇にぶち殺して誰それの仇だの復讐だのと、クソッ下らねえ因縁を作ったら商売の邪魔になる」
「ぐぬ……」
「そしてみっつめ。おめー、まだまだ本気を出してねえ、本気で勝ちに来てねえ」
「何い!?」
「おめーらの乗ってるFX100、俺らも持ってて機体性能から弱点から何もかも知り尽くしている。その機体じゃあ俺らに勝つのは無理だ」
この言葉、ミューユにはまさに図星もいいところであった。グウの音も出ない、とはまさにこんな状況であった。
(スノーホワイトさえ、スノーホワイトさえあれば、私の側が敵に命乞いをさせていたものを)
ミューユの頭はそれでいっぱいになった。
「FX100は二機とも壊れちまった。デカブツの輸送機も飛べねえ。俺らの勝ちだ。もうこれ以上命を奪う必要はねえ。俺らの気が変わらねえうちに、おめーらとっとと逃げな?チャンスの女神様には前髪しかねえ。逃げるチャンスは今しかねえぜ?」
「私は北軍ザグラブのミューユ・タカオ少尉。あなた、名前は?」
「俺はマイカ。マイカ・イチノセ。傭兵部隊$-Duty所属の傭兵だ」
「その名前、覚えておきます」
言うが早いかポカホンタスはマイカのピンクゴーストに背を向けてしゃがみこみ、コクピットのハッチを開けてミューユは一目散に逃げ出した。
そこへ猛スピードで、カツラギ曹長の運転するジープが駆け抜けて行った。後にはジャンパー軍曹も乗っている。
「タカオ少尉、お乗り下さい!」
走るミューユの後ろから、ジャンパー軍曹は身を乗り出してミューユをがっしり抱きかかえ、ジープの座席へと押し込むと、ジープはグラシキ方面へと去っていった。
「済んだ……」
ミキは通信回線がまだ繋がっているのもお構いなしに、大きなため息をついた。
「ミキさんもマイカちゃんも、お疲れさん!あんじょうカタが付いたなあ!」
「なあミキねぇ、アサカ、俺はああ言ってあいつら逃しちまったけど、これで良かったのかなあ?」
「まあ、ワイらあの方は因縁になるこたぁ避けた。あとはあいつらぁがそれをどう取るかじゃ。そこまではワイにゃあ分からん」
「初仕事で綺麗に勝てたんや。言う事なしやで!」
結局、輸送機に乗り込んだ面々も、散り散りになった女ウラ部隊のアサルトアーマーもオキャーマシティからの増援に包囲されるに及んで全員投降し、$-Duty隊、女ウラ部隊、ピーチボーイズ、全員死者を出すことなく、武装蜂起は鎮圧された。
女ウラ部隊は全員が一時拘束されたもののすぐに釈放され、ユイの父親が理事を務めるオガワ財団の保護のもと、補償金の給付や職業の斡旋がなされた。




