帰還
「ヤナギさん!ヤナギさん!起きてください!勝てましたよ!」
無事にウサギ親方を倒せたヤナギに、喜びぴょんぴょんと跳ねながら報告するが、ヤナギはぶっ倒れて返事をしない。ハノは一気に血の気が引く。
「…これ…死んで…」
ハノは急いで生存確認をする。胸に耳を当てると、ドクドクと動いているのがわかる。呼吸音もする。
「死んでは、ない…ですね。気絶してますね。よかった〜」
ハノは安堵の息を吐いた。
「あれほどのことをしたんです。まあそうなりますよね」
ハノはひとまず、ヤナギを背負いながら、辺のベビィラビットを集めた。そして、ヤナギから渡された短剣を使い、ベビィラビットの脚を集め始めた。
「だいたい…三十匹ぐらいですね。人を背負いながらだと、結構骨が折れますね…それと……」
顔のないウサギ親方を見ながら、どうしようかとハノは悩んでいた。
「脚を切ろうにも、硬くて大変…というか、もう短剣も刃こぼれしまくりですね。仕方ない」
ハノはポーチの中から瓶を取り出し、それを飲んだ。量がかなり多く、全部を飲むのに苦労した。
「ぷは…一個銀貨三枚のMP回復ポーション。奮発して買ったんですけど、仕方ありません」
ハノはポーションを飲み干し、魔法で脚を切り落とし、カバンへと詰めた。
「買っててよかった拡張カバン…」
ヤナギを抱えながら、門へと向かったハノ。しかし、ひとつ疑問がよぎる。
「…ヤナギさん。あんな強い力を持っているのに、今日初めてギルドカードを登録したと言っていた。初心者にしてはかなり戦いの筋が良すぎた…田舎の猛者が来たのか…?でも、田舎ではみない…というか都会でも見ない服を着てるし」
ハノの頭に様々な疑問が生まれる。この人は一体どんな人なのか。自分が手を出した案件はとんでもないものではないか。
「…こんなこと、命の恩人に思っちゃダメですよね」
だが、それ以上にこの得体の知れない人に、少し恐怖を抱いていた。けれども今は、自分の恩人を国に安全に運ぶことを最優先にした。
門のすぐ側に来ると、近くの兵士がこちらに駆け寄ってきた。
「お二方。どうしましたか?そんなにボロボロで」
「依頼をこなしてたら…ウサギ親方が襲ってきまして……」
「なんと、大丈夫でしたか?」
兵士が驚いていう。ウサギ親方は、手練でも苦戦するような敵だからだ。
「この人が、何とか倒してくれたんです」
「この人…ん?この金髪……おい、こっち来てくれ」
兵士がもう一人の兵士を呼び出すと、もう一人の兵士は気だるげにこちらに向かった。
「一体どうした…って、こいつ。あのナルシスト野郎じゃねぇか」
「ああ、どうやらこいつが、ウサギ親方を倒したらしい」
兵士はとても驚いた顔をしていた。
「身分証すらなかった野郎が…まさかそこまでの手練だったとは……」
「俺も驚いている。とりあえず、どうぞお入りください」
「はい、ありがとうございます」
なんだかヤナギの謎が深まった気もするが、気にせずにギルドに向かった。だいぶ夜が更けていたが、ギルドはまだやっていた。ギルドは二十四時間営業のため、昼夜問わず人がいる。
「すいません…報酬の受け取りをしたいんですけど」
「戻ってきましたか。遅かったですね。ギルドカードの提示をお願いします」
「これが、僕とこの人のギルドカードです。」
ハノが二人分のギルドカードを渡した。
「…ヤナギさん、寝ています?」
「寝てるって言うか…気絶ですね」
「なにか、ありましたか?」
ハノはウサギ親方の件を話した。だが、ヤナギの持つ力については深く話さなかった。
「まあ!それは大変でしたね。申し訳ございません。こちらの不手際です」
「いえいえ、お気になさらず。ちなみに、ウサギ親方を倒したぶんも、報酬に入りますかね?」
「ええもちろん入ります。それよりも、よく倒せましたね。手練の人が相手でも、結構苦戦する相手なのですが」
ハノは苦笑いしながら何とか誤魔化し、ベビィラビットの脚と、ウサギ親方の脚を渡した。
「…はい、確認しました。少々お待ちください」
受付嬢は何やら後ろに何かを取りに向かった。すぐに戻ってきたが、手には何か持っているようだった。
「こちらが、ベビィラビット三十二体分の、銀貨三枚、銅貨二枚で、こちらがウサギ親方分の、金貨一枚、銀貨三枚です」
「ウサギ親方一体で、ベビィラビット百三十匹分…まあそんくらいですか…」
本当はもう少し高くても良いとは思っていたが、その言葉を飲み込んだ。
「本当は金貨一枚なのですが、今回はこちらの不手際のため、銀貨三枚はその分です」
「なるほど……………ありがとうございました」
ハノは出かけた言葉を頑張って飲み込み、感謝を伝えた。
「はい、お気をつけて」
報酬の入った袋をバックに入れ、自分が泊まっている宿に向かい出した。
「この人がどこに泊まっているのか、よく分からないけど、まあ部屋ひとつ借りて置いときますか」
宿屋に着くと、銅貨三枚でもうひとつ部屋を借り、そこにあるベッドに気絶しているヤナギを寝かせた。
「お風呂は…今日はもう疲れがすごいから、もう寝ちゃいますか」
ハノは明日への不安や希望を抱きながらも、自分も部屋に戻りそのまま眠りについた。
小話
「まさかあいつが、あんなにすげぇやつとはな」
「ああ、思わなかった」
兵士ふたりは休憩部屋で話し合っている。
「…実質、あいつを育てたのは俺みたいなもんだし…あいつの手柄は俺の手柄にならないかな」
「馬鹿言え、そんなわけないだろ。大人しく、この仕事を真っ当するぞ」
「はいはい…いや、本当に人は見かけによらねぇんだな…」




